てっちゃん

ファミリー・ネストのてっちゃんのレビュー・感想・評価

ファミリー・ネスト(1977年製作の映画)
3.8
タルベーラ先生という名は、映画に触れるようになればどこからか聞こえてくるであろう御名前。
サタン・タンゴ観たいなとずっと思っていたけど、なかなか手が出ないのも最早あるあるではないでしょうか。

いつものミニシアターで「タル・ベーラ 伝説前夜」というものが催されることを知り、先生の初鑑賞作品はこちらになりました。
しかも本作は、先生が22歳のときに撮った作品なんだって。
恥ずかしい話、催眠療法的なシーンもあったのか定かではないが、少しうとうとしてしまった。
映画館で寝るのってなんであんな気持ち良いのでしょうかね。

ブタペストの貧困層、住居が見つからない(住む場所がないっていうか需要と供給が合っていない)若夫婦が夫の両親の家に居候する話。
え?それだけ?って感じの話だけど、それだけの話。

特筆すべきは、これがドキュメンタリータッチで描かれていて、最後には夫婦のインタビュー的なシーンすらある。
こういう系のやつ最近観たぞ!と記憶力がアホになっている私でも思い出したのが、ケンローチさんのかなりの初期作品「夜空に星のあるように」。
こちらは本作より10年前に製作され、舞台はロンドンの労働者階級若夫婦の話であったが、どことなく似ている。

このように時代も国も違うのに、どことなく似ているの(パロディとかパクリとかそういうのじゃなくて共鳴し合う感じとでも言うのでしょうか)ものができるのが芸術の面白いとこよな。

さて話題を戻して。
この若夫婦の奥さんの方が主人公的な感じで、自分らの家が欲しい、家があれば、、家さえあれば、私たち夫婦は変われるのに、、っていう切実なメッセージがある。
どうしてそのように思うのかは、本作を観ればストレートに伝わってくるけど、特に義父が下衆野郎。

ようそんな真正面からそんな言葉言えるなってのが幾度となくあり、決めつけは狙った女性を口説こうと必死になっているシーン(なんであんな自信満々なのだ。確かに自信がある人は魅力的だとは思うが、それは相手が判断することであり、自分で言ってしまうとほど愚かなものはない。よくある昔やんちゃしてた話をするときのブーストかかっている感じとでも言いましょうか、とにかくそんな感じ)は、思わず「ふふふ、、、」と笑ってしまい、劇場で笑ったのが私だけだったので、笑った後に「違いますよ、喉になんか引っかかっただけですから」と一芝居やって、義父の下衆っぷりを静観しました。
孫を甘やかし、息子すら甘やかす義理老夫婦。
これはきつすぎでしょ。そりゃ奥さん悲しむよ。

ところが実は、若夫婦の奥さんも強烈で、パート?で働く工場の同僚女性を勝手に家へ連れ込んだり(この同僚女性は同じく住宅難だったのか、よう分からんかったけど)している。
そのへんも描いているのが、実にリアルではないでしょうか。

若夫婦一家で遊園地でのシーン。
これが本作でのハイライト。
幸せになるんだぞー!と叫びたくなってしまった。

「家」というものを通じて、世論を表現し、観客に委ねる。
圧巻だったのは"家"が息苦しい象徴であるように表現していたこと。
果たして"家"を手に入れたとき、全てが解決するのだろうか。

まだ「タル・ベーラ 伝説前夜」はやっているので、別の作品も観ないとと誓うことになった作品でした。
てっちゃん

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