10円様

ドロステのはてで僕らの10円様のレビュー・感想・評価

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)
3.6
『知られたくない秘密は誰にでもあるもんだ。個人の情事からそれこそ国家機密にいたるまで…それがある内はTMは実用化されないんだよ永久に』

 藤子F不二雄先生の短編「TMは絶対に」の一文です。TMとはタイムマシンの事で、作中ではタイムテレビ開発の顛末を描いたものとなっています。「ドロステのはてで僕ら」もF先生の影響をかなり受けている要素が多く観られましたね。藤子F不二雄先生の誕生日は12月1日。なので合わせて1日に鑑賞しました。NetflixもAmazonも示し合わせたように12日1日に配信開始なんてやってくれるじゃないですか!

 藤子F不二雄先生はSF作品を良く描くのですが、難解な理論はすっとばして、日常の中にあるファンタジーの中で等身大の一般人が困惑したり、活躍したりするという「もしかしたら自分にも起こるかもしれない」といったワクワク感を与えてくれるものになっているんですよね。
 ドロステ〜もまさにそれで突如現れた時空の歪み、しかも2分間というどうしよもない微妙な時間を素人達が知恵を働かせて展開させていくという構成がF作品そのものでした。タイムテレビという未知の物体に独自の理論で更に先の未来を観て、やる事といったらしょうもない事。正にのび太君がやりそうな事ですよね。
 そういった科学の高次的な部分を一般レベルまで落としてワイワイやるというのがF先生の真骨頂です。実際F先生の提唱するSFとは「少し不思議」の略ですからね。

 ヨーロッパ企画。「サマータイムマシンブルース」や「曲がれスプーン」でも分かるように、今作も脚本が良く作り込まれていました。ワンカット!のように見えて実は編集でそのように見せているのだそうですが、撮影はかなり大変だったといいます。特殊な撮影方法で、シーンの撮影後に実際に映像を観てからOKやNGを出していて、役者も終わってからでないと結果が分からなかったそうです。それにしてはあんなに緻密な演出を何の違和感もなく作られたのは凄いと思います。

 作中では藤子F不二雄先生の短編集について語るシーンがあり、ヒロインの女の子は「俺と俺と俺」が好きなそうで。やっぱりFリスペクトの作品でした。

 レビュアー、みどりさんからの教えてもらった作品です!ありがとう〜こんな作品また紹介して下さい!
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