空海花

私の知らないわたしの素顔の空海花のレビュー・感想・評価

私の知らないわたしの素顔(2019年製作の映画)
3.0
またジュリエット・ビノシュ。
しかも今作はほぼずっと出ずっぱりビノシュの演技を観ていられる。

でも話が怖すぎて。
嘘に嘘を重ね、嘘が嘘を呼ぶ。
痛いほど気持ちはよくわかる。いや本当に痛いくらい。
で、わかっちゃう人にはホラー並みに怖い。

嘘も方便とか誰かを守る嘘はまだ許せる。
でもこの嘘は相手のことを考えていない嘘だし
おそらくプライドから来るもので
女としての自尊心だ。

最後にはそこまでした理由も明かされる。
しかもこれが結構辛い…
否でも、と何度も思わずにはいられず。

フィクションとして楽しめば良いのだろうけれど、「死は怖くない」に続く言葉とか、
「大人だって弱い」とか。
それはわかる。
もっと早く口に出していたらと思うけれど。
わかるよ、大人とかプライドが邪魔をする。
でもそれとこれとは別というか
人を巻き込むくらいなら邪魔なものは捨ててしまえばいい。
フィクションをとやかく言うのは無粋だが。
バレそうでバレない嘘はとにかく観ててそわそわしちゃってダメなんです(笑)
リチャード・ジュエルの後だから余計だった。
幾つになっても恋愛が当然の風な
フランスならではの怖さという気もする。

ビノシュの怪演は凄かった。
そして映画としては良くできている。
想像との二重構造を有耶無耶にしないし、映像の細部に意味がある。
行き止まりのストレートさには、震えた。

カウンセラーが少し救うのがこの物語の救い。
この人も不思議だったな。
物語としては悲しいし、いやな話だ。
たぶん、うまく手放すしかないんだろうな。


2020劇場鑑賞12本目
空海花

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