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BRUTALの消費者のレビュー・感想・評価

BRUTAL(2018年製作の映画)
3.8
・ジャンル
バイオレンス/ゴア/ドラマ/Disturbing Movie

・感想
ミソジニーな小太り男殺人鬼
クールで美人なミサンドリー殺人鬼
それぞれ凶行を重ねてきた両者が邂逅するまでを3部構成で描いた作品
山田マンやdodo、HELL BELL等のラッパー陣や“ビッグウェーブおじさん”として有名なBUTCH、そして「コワすぎ!」シリーズの工藤役でお馴染みの大迫茂生さんがエピソードを跨いで登場するキーマン的存在のホームレス役で出演している
現在はこちらで有料配信されています
https://vimeo.com/ondemand/brutal3

まずは男の殺人鬼について
小太りでとっつぁん坊やみたいな顔から一見インセル的なそれかと思いきや怒りや憎悪、絶望と同じくらい覚悟や手慣れた感じが見えてなかなかイイ
暴力や殺人の描写も血糊こそ絵の具感が時々あったりするものの映像映え重視なソレと無骨な拷問の間でちょうど良い塩梅で見応えアリ
腹パンでちゃんと嘔吐してたり遺体処理後の湯船から毛髪が出て来たりと細部へのこだわりも感じられる

次に女の殺人鬼について
男が街中で標的を選び拉致しては拷問し殺しているのに対して、恐らくこちらは言い寄ってきたアレな男だけを惨殺している
これが後に読み取れる殺人の理由の推察をミスリードする感じで良かった
ただ多数の男を殺していながら惹かれてしまった中年男性の言動がキザでポエムみたいな感性のソレだったのが玉に傷
容姿で評価していない事を表現するという意味で冴えない地味な見た目だったのは良かったとは思う
その次に残念だったのが過去の連続殺人が事後や瞬間ばかり映されていた点
細身で如何にも非力だとはいえ頭を使って襲う様なスタイルにでもすれば良かったんじゃないかなぁ、と

そして2人の邂逅
ここが想像を超えて結構良かった!
男殺人鬼は単なるミソジニーというよりは社会的に向けられるジェンダーバイアスやジェンダーロールの視点への馴染めなさや怒り等から女性への殺意を爆発させてきた
その事実がチンポの除去された裸体で示されるのがなかなかに衝撃的
対して女殺人鬼も同様に乳首を切除しマンコを縫合という身体的性別に向けられる目線への嫌悪感を自身にも向けている
男や女、ではなく個人として触れ合い受け止め理解してくれる相手を求めてきた2人
が既に性器を互いに封じているが為に取った“繋がる”方法もまた破滅的で精神の拗れを視覚で表現した面白いオチだなぁ、と
その後、女性が初めて自分以外に「大丈夫だよ」と語り掛けるというラストも歪み切った自分と同じ様にならないよね?という不安とも男性への「あなただけじゃない」という愛情とも受け取れて切ないけど美しい
各部のバカップルの会話が後の展開を示唆する形になっていたのも拗らせの描き方として上手かった

この3部が凄く良かったのでもっと予算投じて変なカメオ出演やコミカルさを排除して徹底的に暴力/ゴア描写とドラマ性に振り切れば普通に名画になった様な気も…
とはいえ思わぬ掘り出し物だったなぁ…
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