ボブ·マーレーもだが、ナレーション解釈を廃したワイズマン的な、次から次へ、さまざまなイランからアフガンへの出国手続きの管理所での人間模様、というには慌ただしくせっつき、緊迫し、切返しの角度·サイズ·ポイント·背後次のヒトや90°返しての縦に伸びる受付け場の形、とタッチは機能的で微かに感じられるべき味わいよりも、人間臭さ·道徳や情勢力学を剥き出しにし続けてく。マフマルバフの娘らほどには、キアロスタミJr.はどうみても、才能という一点ではかなり欠ける。最近のイラン映画スタイルにうまくのっかってるリズムともいえるが、業界のやり手とはなっても、作家としては期待はしない方がいい。二代目映画作家は、女のコに限るというわけでもあるまいが。効率的で面白いのは確かだが、最も珍重されるゆとりから生まれるサムシング~展開や視界を越えた次なるステージ~に決定的に欠けている。男のコは、体裁·見てくれのよさに囚われ、ハートが疎かになる。
アフガニスタンから、タリバンの圧力等により、生計が成り立たず難民となり隣接するイランに流れていった相当数の人々。正規の旅券等は所有していない大方の人々は、イランでの居住許可を得て、貨幣価値も高いイランで働き口を3K?も厭わず見つけ、故国に残された家族に送金を始めて行く、空振りも多いが。しかし、イランとアメリカの関係が決定的にに悪化し、経済制裁が始まると、貨幣価値も逆転し大量の帰国希望者が発生してゆく。国境近くのキャンプに一時据え置かれて、帰国の為の手続きがなされてゆくが、あまりに並ぶ人が多く、輸送手段以前に、処理が進まず滞る。それでも懸命な訴え·配慮がなされてゆくが、それどころではない心身の病人もかなりいて、ケースも千差万別(働き口のためでなく、離れた家族の葬儀や帰郷も。アフガンではご法度の刺青や麻薬などクリアすべき問題も)で、係に置かれたこれも薄給の職員室たちも対処に苦慮し、数的に喧騒林立の場と化する。今後の予定、再入国可能性から聞き、登録時の指紋·顔写真·名前から本人確認がされてゆく。もともと、聞き取りや諸事情で名前登録はイージー。せっかく得た居住許可証も破棄しなければ手続きはスタートしない。女性は個人の意志だけでは出国できず、後見者たる夫の承認が必要。夫らしきが付き添ってても怪しく、結婚証明書が必要となる。家族相互の支配·優位の関わる人質の存在もややこしくする。帰国も永久でなく、一時的ですぐ再入国のケースも。隠し事も多く、国や意識の後進性もあからさまになって足を引っ張り、当事者本人にとっての最良の形と、両国間の治安も保たねばならぬ。貧しく無知で懸命で取り乱す人たちに、どこまで介入し、係わればいいのか。
尺数も負担にならず、内容理解も進み、良くできてるといえる作品だが、作品·情報伝達、そして映画としての威勢のよさに留まってはいる。見た目の出来は格段にいいのは確かも。