鎌谷ミキ

すばらしき世界の鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
【大事なのは誰かと繋がりを持って、社会から孤立しないことです】

実は高評価するけれど(主に終わり方が)好きになれない作風である西川美和監督。

2021年ベストが出揃う中、一位をとっているのもあって、鑑賞にいたりました。

序盤から丁寧な作り。刑務所の中って、さっぱりしてて、こんな感じかなと思わせてくれます。

「お世話になりました」よく塀の辺りで聞きますが、本作は主人公三上正夫(役所広司さん)を警察官がバスで見送るという、珍しい描写です。なるほど。

養子縁組の話が出てくるのは、予想外。今、中絶薬の話が話題になってますけど、子供を望む夫婦の元に赤ちゃんが引き取られる方が幸せだと私も思います。
正夫が泣き出す演技、素晴らしい。。。

実は私の従兄弟、施設で育ったんです。私の母の兄(叔父さんですね)の妻が育児放棄し、叔父はそれで精神病院に入院するという、壮絶な話が…付かず離れずの関係です、従兄妹とは。

生活保護…社会問題てんこ盛りですね。役所の人は冷たい目でしたが、病院はそんな患者にも、やさしい。

そして、一人暮らしを始める正夫。刑務所で培った裁縫でカーテンまで手作り。その発想はなかった!

本作は、いかに堅気の人間が不当な扱いを受けるのか、よくわかります。そんなこと、本作を見るまで考えたこともなかった。

元妻の、再婚相手との間の子供の年齢を聞いて逆算するの、せつない…安田成美さん、過去は正夫の肩を持ってたから、余計辛い…

仲野大賀くんと長澤まさみさんの対立も、なかなか見物。正夫のありのままの姿を撮るという、ジャーナリズムとの葛藤。

「人の施しで生きとる人間の気持ちが、わかるとね?」あー、胸が痛い…(私も人の施しで、生きてる)

なんか『ゆれる』『ディア・ドクター』より台詞が攻めてる感じがする、いや、通常通りなのかもしれないな、私が知らないだけで。

役所で普通、受付業務してたら、外線出ないけどねー。
 
やっと本題。正夫は母親に捨てられたの、か。だから、正夫はヤクザにならざるを得なかったのか。うん、興味深い。
私は怒りを抑えされない時、よく物に当たっていました。カップラーメンを投げる正夫の気持ち、痛いほどわかる。自分で自分を慰める方法が見つからないんだよ…ラスト付近、正夫の葛藤。正直見てられない…

んでね"ある事件"から、涙が止まらなかった…理由はネタバレで書きます。

"優しさ"も見せるのに、なんでそんなに"ツラさ"を強調するのでしょうかね。西川監督、またしてもやってくれました…

追記:本作に原案があることを知りました。
それでもあの終わらせ方をしたかった西川監督。相見えない…
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