どいたま

プラットフォームのどいたまのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.7
スペイン発のシチュエーションスリラーという位置付けの本作。

閉じられた空間、限られた食料で生き残らなければならない地獄を体験させられました。最初は平和的に解決していこうとするも、弱肉強食の世界に否応なく順応させられる無力感。シチュエーションスリラーの醍醐味ですね。
色々な立場の人が出てくるのも面白いですね。既に世界に順応しきった老人、我が子を探す母親、社会の縮図としてこの世界に希望を見出した元管理人などなど。色々な立場から「もし、自分が同じ立場になったら…」という空想をするのが楽しい作品でした。

上の層ほど多くの資源にありつくことができ、下の層に行けば行くほど残り物の量が少なくなる、という階層構造。
この搾取の構造は、現実の資本主義社会を構成する階層構造を分かりやすく象徴しています。
『富』や『権力』といった、誰もが欲しいと思う資本。本作の中ではこれを『食べ物』に置き換えています。
上の階層にいて、豊かな資源を享受している時には、穏やかに生きることができますが、資源が少なくなればなる程、生きるために支払わなければならないコスト、捨てなければならないプライドは増えていきます。
なんとも嘆かわしいですが、これが現実の写し鏡であることを我々は肝に銘じなければなりまけん。自分が豊かさを享受しているということは、誰かがどこかで損をしているかもしれない。我々の社会が前提としている、この資本主義という仕組みについて、改めて振り返って考えてみるいい機会にもなる映画でもあると思いました。
どいたま

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