エイデン

プラットフォームのエイデンのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
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中年男性のゴレンは見知らぬ場所で目を覚ます
そこは簡素なベッドや洗面台だけがあり、中央の床と天井には四角い穴が空いているコンクリートがむき出しとなった部屋
向かいにいた高齢の男性は、ゴレンに今は“48層”で月の始めだと告げる
ゴレンが中央の穴を覗き込むと、同じような2人の人間がいる部屋が延々と下に続いており、上にも同じように部屋が続いていた
向かいの男性はトリマガシと名乗り、何を食うかが問題だと意味のわからないことを語るだけだった
上下の階層にいる人間に声を掛けようとしたゴレンをトリマガシが止め、下の者には話しかけるな、上の者も答えないと説明する
すると壁のランプが音を立てて緑から赤にかわり、上の階から穴を通って大きな台座(プラットフォーム)が降りてくる
そこには食べ物の山が置かれていたが、全て上の階にいた人間たちの食べ残しだった
48層に止まったプラットフォームを見てゴレンは動揺を隠せずにいたが、トリマガシはそれを気にも留めず一心不乱に食べ残しを貪っていく
唖然として自分を見つめるゴレンに気付いたトリマガシは、同じように食べ物を食べるよう勧める
48層はまだ食べ物が食べられる状態で、毎月 階層が入れ替わるため食べられない時もあるのだと言う
またトリマガシが“穴”と呼ぶこの建造物では、様々な理由で人も減ることがあると平然と話す
それを聞いたゴレンは、手の付いていないリンゴを後で食うと言ってポケットに忍ばせる
やがてプラットフォームは音を合図に下の階へと降りて行き、食事を終えたトリマガシが下層に向けてツバを吐き掛ける
ここにいる人間は皆、下層階の人間を見下し、上層階の人間を恨んでいたのだ
すると今度は部屋の中がオーブンのように熱され始める
トリマガシはプラットフォームが階層に止まっている間でしか食べられないからだと説明し、ゴレンがリンゴを穴に放り投げると温度は下がっていくのだった
そんな中 ゴレンは“認定証”を得るために自らの意思で穴へとやって来たという事実を語る
認定証など聞いたこともないというトリマガシに、ゴレンは好きなものを1つだけ持ち込めるというルールに従い『ドン・キホーテ』の本を持ち込んだと話す
一方 トリマガシは怒りに任せてテレビを窓から放り投げ、不法移民に当たったことで殺してしまったため既に1年も穴にいると語る
そしてトリマガシが持ち込んだのは鋭利な包丁だった
奇妙な生活を続けることになったゴレンは、やがてこの穴のシステムに疑問を持ち、反逆を企てていく



スペイン産SFシチュエーション・スリラー

上から下まで同じ食事を共有していかなければならない謎空間を舞台にした作品
上の階層であればあるほど良い食事を好きなだけありつけ、下の階層であればあるほど食べられるもの自体少なくなっていく
上の階層の人間は下の階層の人間を蔑み、逆であれば妬み憎しみを持つという構造から、貧富の差を視覚化して描いているのは明白

ミソになってるのは、個人的には2つあって、1つはひと月ごとに階層が入れ替わるという設定
『キューブ』同様、一体どういうシステムなのかはさておいて、様々な階層を行き来する=社会的貧富が変化することで、同じ人間であっても心理が変化していくことがよくわかる
もう1つはそのシステム=社会構造に対して、主人公が反逆していくというストーリーとラスト
ぶっちゃけ先のシステムに翻弄される人で1つのストーリーできそうなもんだけど、それ自体に疑問を持って立ち向かっていくのは小気味良く感じた
まあやってることはかなり無理があるし、人間そんな簡単に貧富の差を埋められるものではないのは事実なんだけど、
今の時代 真に正しい解決法は無いことを前提として、より良い希望を次代へ継いで行こうっていうラストの持って行き方は良かった

もちろんグロテスクな世界観とかスリラーらしい展開もあって、個人的には楽しめた
メッセージ性も受け取りながら色々考えて観ましょう
エイデン

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