わたふぁ

カサノバのわたふぁのレビュー・感想・評価

カサノバ(1976年製作の映画)
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たっぷりのベロアを使った衣装や
木彫りの奇妙な人形や
無数のローソク
随所に用いられた金色の絵の具の果てまで
すべてがお金で出来ている。
山といるエキストラも
ビニール製の大海原も
不気味なメイクやカツラも
火が消えるたびに撮り直したであろうフィルムの数々も
そのすべてが時間と資金の蓄積だ。

人々の目を楽しませたい
そのシンプルで巨大なフェリーニのサービス精神に
耽溺する映画だと思う。
世知辛い時代がつづく平成の世には
信じられないほど煌びやかに映える。
CGという机上の空論がデフォルトとなった現代に、
本物の贅がデジタルリマスターで蘇った。

76年は例えば、スコセッシがタクシードライバー、トリュフォーが思春期、ベルトルッチが1900年を公開した年で、ルーカスはもうスターウォーズに着手していた頃だけど
世界が「フェリーニまじか..」ってなった年でもあると思う。良い意味でも悪い意味でも。

時代とか流行とかそっちのけで
自分が愛でたいと思う嗜好品を作っている感じ。とは言え、アートとして自己表現をしている映画だとは到底思えない。根源的なポエジーがあるもん。

一体なんなんだこれは。
何度見てもわからないカオス。

少なくとも、大柄なドナルド・サザーランドが落武者ヘアーでピンク色のおべべを着せられ、しかも全編イタリア語に吹き替えられてるというめっちゃ滑稽な映画ではある。