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カモン カモンのkekqのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
2024年1本目。コンパクトな人間関係の中に深い苦悩と優しい希望が美しく詰め込まれた佳作だった。

A24は明確なコンセプトをブレることなく掘り下げる作品が特徴的だが、今回は「子供」という非常に描きづらいテーマに挑んでいた。

大人が子供を理解することは難しい。子供は日々思考し、体験し、感じることで成長していくが、大人ほどうまく言語化することができず過去と現在とのつながりにも執着しないまま前進していく。
植物や人間以外の動物のように観察する以上のことがわからない対象とは異なり、人間としての精神世界を持っているため、そこもしっかりと理解しなければいけない。

本作ではアメリカに生きる多くの子供のインタビューを抜粋して紹介し、彼らの世界を言語化しようと試みている。
とても豊かに発せられる子供たちの想いは非常に断片的で、夜空の星のように互いに干渉しあうことなく輝きを放っている。
それこそまさに子供の世界を象徴的に表現しており、広い世界の繋がりの中で生きるのではなく、自分の目に見えるコンパクトな世界の瞬間に対する瑞々しく力強いメッセージこそが本質であると感じた。

とはいえ本編はドキュメンタリーではなくドラマである。言わずもがなではあるが、役者の演技が素晴らしい。
大人として子供と向き合うことの難しさと面白さの両方が鮮烈な感情表現で描かれ続ける。

自分が理性的で誠実に生きてきたと自負する人間が、生意気な子供に対してつい支配的に振る舞ってしまった時の自責感。子を持つ人間として非常に共感ができ、ホアキン・フェニックスのしんどさとイライラが痛いほど伝わった。

愛着障害、発達障害というセンシティブなテーマにも上手に切り込んでおり、リアリティのあるドラマとしての構成は見事としか言いようがない。

ただ成り行きで生活を共にし、それが終わるまでの話なのに最後は涙が溢れてしまった。
人間として生きることの葛藤は、子供も大人も乗り越えなければいけない。
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