まりぃくりすてぃ

ラウンドアバウトのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ラウンドアバウト(2019年製作の映画)
3.7
「頑張って働いてるんだけど、若くして人生モヤモヤ」ということだ。社会経済的弱者の、生活一つが、私たち自身と地続きな自主制作邦画の中に、こうして息づくべくして息づいてる。映画撮影に充てた土日以外は私たちと同じく一般社会人として労働してるという佐藤監督による、ある女子のモヤ。
その弱い生活者みちるを演じた田口夏帆さんは、横顔など強力なモテ角度をいくつも持つカワイめの人で、相手役♂とは少々不釣り合い。ゆえに、主演女優の容姿だけが浮いた “顔映画” になっちゃうおそれもあったのだけれど、そうはならなかったね。演技もナカナカだったから。“情けない弱者だけど、完全な弱者じゃぁないわよ” という台本に、表情の微細な移ろい等でしっかり応えてた。相手役の桜井保幸さんとくっつくシーンは、ここ最近では比べる映画がないぐらいに美しかった!
そのクズ男役・桜井さんなんだけど、最初の登場シーンのクズ誇張がちょっと現実離れ。その後もしばらく浮いてた。でも、イケメンとは云えない桜井さんがいつしか寅さん顔に見えだして、その頃から私は、彼が徐々に確実にスクリーン内に根をはってくるのがわかった。支配的なまでに穏やかに、必要な役者にほぼなってた気がする。
ただ、彼がかなり善いこと語ってたらしい終盤のところで、音声が聴き取りづらくなってて、残念。

[池袋シネロサ]