ののな

バビロンのののなのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった!長かった!!

冒頭で象徴(🐘がダブルミーニング笑)するように、権力者が主催する豪奢な集まりのためだけに裏で文字通り汚れ仕事をこなす人々や犠牲になる人々がいる、エキストラが死んでも事故扱いにする始末、閉鎖的な上流階級が行っている贅沢の醜さとくだらなさ、アスベストをじゃんじゃん使う(これは当時仕方ないことなので映画制作の残酷さを示す訳ではないはず)、マイクロアグレッションどころではない差別、生まれながらであろうとなかろうと"スター"であっても急激に大衆の支持を失うことの無惨さ等、映画界やトーキー黎明期の功罪を描いているものの、これが「あってはならないことだった」とは思っていない目線を感じた!むしろ映画の魅力を精一杯伝えようとする思いや映画への愛情が伝わってくる。舞台と比べ破格で楽しめるの本当にありがたい✨

マーゴット・ロビーはアムステルダムに引き続き、美しく自由で不自由な、躁鬱的で刹那的な素晴らしい演技だった。郷土愛や家族愛がある純粋な心とどこまでもぶっ飛んでしまうヤバさとが両立し、活き活きしていた☺️

ジャックが彼女取っ替え引っ替えしているのでレオ様オマージュかと思ったけど、あちらは年齢重視、ジャックはバリエーション豊富だった💧ブラピの演技がこれまた良かった…。ずっとジャックをジャックの声付きで観てきたので、あの声がミスマッチなのかが分からず……😅

3人の中で生き残ったマニーが、自身もイタリア語やドイツ語を操るジャックをして「言語の天才」と言わしめる多言語話者なのは、タイトル「バビロン」の逸話で有名な「バベルの塔」に関係しているのではないかな?と思った。彼なら神の怒り・バベルの塔崩壊・バビロンの破滅に耐えうるという意味なのかと勝手に解釈した。

「百万回繰り返されるやり取り」でもあったように、栄枯盛衰は世の常で、大スター一人よりずっと大きく抗えないもので、どうしようもできない。私は大衆の一人だが、何人も引退していく人や見なくなっていく人がいて、ずっと活躍している人がいかに少ないか、いかに進化し続けているか、そして社交的でなければならないか、自分のような人間からも垣間見える。

今も声優が表舞台に立つようになって見た目を求められたり(もともとは声優は人前に立つ役者たちだったが)、テレビドラマに舞台俳優・声優が進出したり、かと思えば声のお仕事でアイドルや俳優が活躍したり、ヴァーチャルな姿で活躍する覆面の人がいたり、業界それぞれの新しい場面に新しい風が吹き続け、人々は新しいものを求める。かと思えば温故知新の如く、誰に求められるでもなく平成ギャルを貫き続けていた田中れいなが予期せず話題になったりする。需要の読めない難しい世界💦

映画業界から手を切ったパーマー、需要のある新天地へ旅立つレディ・フェイは、「終わった人」となる前に「家」に見切りをつけている存在として象徴的だった。
作中こちらまで辛くなるような痛々しい描写のあるジャックだけでなく、スポットライトに立っていたわけではないジョージも、仕事は関係ないが(今までの失恋と違い確実な方法を選んでいるため、もしかすると自分のプロデューサーとしてのセンスが古くなったという思いもあったかもしれない)失恋から自分はもう終わりだと思い込んで自殺してしまった。このことも上記の人々との対比に見える。

ジャックはトーキーを拒んだわけではなく、新しいものを積極的に取り入れようとする精神の持ち主だっただけにあの観客の反応は辛いなあ。

オワコンだの老害だの言う人(本邦にも心当たりが○-□😥)はいるが、自分が求められなくなったと悟って自殺する生き様より、パーマーやレディ・フェイ、何食わぬ顔でLAに再来したマニーたちの方が格好良く感じるのは私だけだろうか。自分の長いキャリアを利用して「マッシブ・タレント」を撮っちゃうようなニコラス・ケイジもすごいと思う(観るの楽しみ!)。落ちぶれて低級映画ばっかりって言われてるかもだけど、スターは不服かもしれないけど、少なくとも私は低級映画も好きなので。

ヤク中、アル中、ギャンブル中毒が心から苦手なので、適切な治療を施してくれと心から思った(エキストラ死亡時の飲酒トラブルの下りで、「病気だ」って言ってたような)。

監督のパートナーいい役してたなあ。
ののな

ののな