映画を愛する者の映画。
ハリウッド黄金期の走馬灯。
アナログの極みだったであろう昔の映画の舞台裏を想像したことが、これまであまり無かったことに気づいた。
恥ずかしながら公開から観るまでの間が空きすぎていて、チャゼルの作品だったことをすっかり忘れていたものの、どこかで聞き覚えのあるメロディが繰り返されていることではっとしました。
まんまLALALANDやん。
全体的に走馬灯みたいな構成もそのまま。
この作品も絵画的な構成や色味に拘られていて、それが酒池肉林そのものの1920年代ハリウッドと混ざり合い重厚な奥行きが生まれている。
カリスマ的な魅力で急激に駆け上がったものの没落していくネリー、持ち前の生真面目さでじわじわと上り詰めるマニーの対比もアーティストの現実そのもので突き刺さる。これもLALALANDと同じ。
そしてブラピやトビー・マグワイアの翳りのある哀愁もめちゃくちゃ良かった。
現場では平気で人が死ぬ、パワハラやセクハラが横行する、俳優たちは稼いだ金で大騒ぎして薬と汚物塗れになり、それでもまた撮影に臨む。コンプラまみれの現代ではありえないこんな舞台裏も、なんだか消え去ってしまった人間の情熱の最後の灯火のように思えてくる。
映画や映画愛をテーマに映画を撮る。
奇しくも最近NOPEを観たばかりだったので、重なるところが多々あった。最後のモンタージュでは件の騎手の映像まで出てくる。
そしてなぜか設定された時代にそぐわない名作映像までが流れてくる。その時点でマニーはデイミアン・チャゼル自身にすり替えられる。
若くして大ヒットを生み出し、莫大な予算を手にした彼に降りかかるものは必ずしも賞賛のみでは無いだろう。
しかし彼の「並外れた、誰にも成し得ないことを実現できる才能が、俺にはある！俺は天才だ！」と言い切るギラッギラのギャルバイブスに痺れる。これからも末永くギラギラしながら、図々しくハリウッドの老耄たちを引っ叩いてほしい。秀作。
