ぴのした

星の子のぴのしたのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.7
分かりやすい起承転結はないものの、終始面白く観れた。

新興宗教を信じる両親と、信じない友達との間で心が揺れ動く。

親は生活の全部を宗教に投げ打つというよりも、宗教信じてる以外は普通にいい親のように見える。そこがちひろが親を簡単に切り捨てられない理由なんだろうな。

一方で友達との親密なやりとりも、すごくちひろを「普通側」に誘惑する。志村君いい奴だなあ。

ラストシーン、お父さんの「まだ見えない」という言葉に余韻を感じる。親子3人で同じ方向を見つめていても、親と子が同時に光を見ることはできない。それを「まだ」見れない、ということで、いつか心の底から和解できる予感を残している。

全体的にもっと先の話を知りたくなるようなストーリーだったな。ドラマの序盤数話が終わったときのような、いろんな人が出てきて、これからどう展開する?というところで終わってしまう。

黒木華が凶悪な面を直接見せるシーンもないし、ラストシーンの両親の今生の別れのような接し方も気になる。姉との再会は?ちひろが普通の世界を選んで両親と対立するシーンは?見る側の予感を断ち切って不穏な余韻を残すのは、今村夏子のこれまでの小説でもあったな。