シノミー

ジョゼと虎と魚たちのシノミーのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
4.3
手を伸ばさなければ、求めていることも伝わらない。

_

恒夫(#中川大志)は大阪のダイビングショップでアルバイトをしている大学生だが、メキシコに留学に行くために掛け持ちをして必死にバイトをしていた。
そんなある日、遅い時間に坂から車椅子で駆け下りてきた女の子とぶつかる。
危うく大怪我になるところだが、なんとか抱き止めてキャッチする恒夫。
その女の子はジョゼ(#清原果耶)と名乗り、車椅子を押すおばあちゃんの家に招かれる。

恒夫はおばあちゃんにジョゼの面倒をみるアルバイトをするように頼まれ、時給の高さから引き受けることにする。

_
今年観た中で一番美しい映画だったかも。

BONESの作るアニメーションが大阪の街をここまで美しく染め上げるとは思いもしなかった。

海の景色、夏の風景、冬の雪や春の桜。

季節が移ろいでいく大阪の風景をこんなに美しい映像で観られる作品は恐らく今作だけだと思う。

大阪に住んでいればわかる、大阪メトロの改札も、HEPの観覧車もなんばパークスも天王寺動物園も煌びやかな景色に見えた。

海のシーンはアニメ史に残っていいほどの名シーンになったのではないかってくらい綺麗でした。

そして、映像だけではなくて、健常者と障碍者の世界の見え方の違いや、感じ方の違いも明確にわかる。

僕たちが生きていく中で、当たり前にできることや知れることが、できなくて、それに手を伸ばすことがどれだけ大変なことなのかを感覚的に理解した。

夢や理想を叶えるために努力する素晴らしさがあって、でもそれに届かないもどかしさや悔しさもあって、世の中は思ったより残酷だなって感じた。

前半のロマンス調は後半から一気に変わって、しんどくなるし、現実を受け止める辛さもあって、決して綺麗事だけではないメッセージがあったと思う。

ただ、周りの人に恵まれたのもあって、大切なことに気付かされたり、大きな壁を乗り越える勇気を貰ったりして、ちょっと大袈裟かもしれないけど、そんなことに現実味を感じた。

演出は若干過剰だったかもしれないけど、それが似合うほど、映像と音楽が良くて、ありえないって思いながらも、どこかでもしかしたらあるのかなって思える物語でした。
涙腺が弱い人が観たらめっちゃ泣くと思う。普通に感動しました。
映画館で観る価値ある作品です。おすすめです。
シノミー

シノミー