なっちゃん

プロミシング・ヤング・ウーマンのなっちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

よかった。
エンタメ性と監督のメッセージ主張のバランスが素晴らしい。脚本賞、ラストの一件に関する賞か?だとしたら弱いような?と終映直後思ったけど、このバランスに対しての賞だとしたら納得。
そういう意味ではゲットアウトもそうだったな。
画面もポップでかわいい〜

終始物語の主軸であるニーナのビジュアルイメージを示さないこだわりについて、性犯罪被害者の匿名性確保を映画でも実践していて素敵。それにしても殺人事件の被害者は「26歳男性」とかでいいのに性犯罪となると被害者にフォーカスされる点は本当に不思議。
私も無意識のうちに映画見ながら「ニーナの当時の写真出てこやんのやな〜」と思ってしまってたが、知ってどないすんねんって話。殺人事件なら被害者の顔写真なしでニュースきいてもまあここまで違和感ないはず。無意識のうちに被害者女性の外見を見て"何か"(恐らく被害者が美しかったのか、セクシーか)を傲慢にも判断しようとする欲求が自分の中にあったのではないか。本作を見ているとこういう自分の無意識の差別にハッとすることが多かった。
性に関するトピックはなんでも人類において特に異質で無意識によって行動が決定されている場面が多すぎる気がしてならない。

キャシーは男を罰したいのではなくて、「親友を殺した世界が生きるに値するか」信じたくてデートレイプ狩りしてたと思う。知らない男の家に上がるわけだし、復讐にしてはあまりにも危険な行為。自暴自棄なんやろうな…特に小児科医が家に誘った後ゴミ箱蹴ったシーンで気づいた。信じたかったんよな…
とにかくかわいそう。
キャシーの部屋をみても、彼女は明らかに人生のある時期で時間が止まっていて、前に進めていないことがわかる。ニーナを殺した世界で生きることを受容できていない。前に進めない。生きるに値するかずっと確認してる。

デートレイプ/レイプする奴って女のことを一個の人間として見てないんよな。
被害者は名前もあるし、感情もある、同じ人間なんですが。それを浮き彫りにするキャシーの「私の名前わかる?」が痛烈。
性犯罪が起きたときになんか酔ってた被害者側も悪いみたいな雰囲気なんなんやろな、それ言ってる人はうっかり酩酊しちゃったときに何されても文句言わないのか。

女性蔑視問題を語るときに「この事件の被害者があなたの娘だったら〜」と言うのもう古いんですがそれを実践する校長への復讐も痛快。真顔で「前途有望な女の子」を踏みつけて「前途有望な男の子」を見逃す家父長制の奴隷への強烈な一撃でした。

しかし個人的には小児科医との恋愛うまくいってくれ…!とずっと願っていて、ビデオテープの件が発覚したときも「でもまだ継続ワンチャンないですかね?」と思ったがたしかにあそこで許しちゃうってことは親友を殺した世界を許すことになっちゃうからダメなんやろうな。
ニーナの精神を殺し、命を奪ったのがレイプ事件であるということは、レイプ事件は実質殺人事件で、アルモンローは殺人者で、周りに居たのは殺人を止めなかった共犯者と考えてみると許せない気持ちがわかる。
罪を償っていない殺人共犯者と付き合えないな。

タイトルは実際にあった大学の性犯罪事件で加害側の学生が裁判で「promicing young manの未来を潰してはいけない」とのことで減刑されたところからとったようとパンフレットで見た。
いやいやその一方でpromicing young womanの未来踏みつけられてますけど…っていう攻めタイトルなのもかっこいい。
なっちゃん

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