ツクヨミ

17歳の瞳に映る世界のツクヨミのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
3.9
"望まない妊娠"から見えてきた世界の表情。
17歳のオータムは妊娠していたことを検査で知り中絶を試みるがペンシルベニア州では親の同意がないとできない。そこで彼女は従姉妹のスカイラーと2人でニューヨークへ渡る…
アメリカで暮らす少女の危機を真摯に描いたドラマ作品。今作はカメラが主人公オータムにずっと密着し、彼女の心の機微を真っ直ぐ見つめる姿勢に心打たれました。彼女は元々口数が少なく自分の感情をあまり表には出さない…だからこそ密着したカメラワークが映す表情が映える。表情というか"目"はなかなか嘘をつけない…彼女の目を見ているだけで心情の移り変わりがわかる気がした。
しかし主人公オータムが直面する現実は苦しい。望まない妊娠により不安と苛立ちばかり募り、病院には中絶せず里親制度を利用しろと言われる、男にはちょっかいをかけられ体を求められる。そんな状況を彼女と一緒に体験していくのは辛かった。ニューヨークの街は冷たい…そんなことを思いたくはないがそう見えてしまう演出が苦しさを倍増させる。この苦しさは在日外国人の現状を描いた"海辺の彼女たち"に近い印象だと感じた。状況は違うがどちらの主人公も妊娠に悩んでいる…しかし中絶を望むか強要されるかではまったく印象は変わる。オータムは自ら中絶を望んだのだから…そこだけは救いなのかもしれない。
全体を通して苦しさが先行していたが、少女が抱える問題を真摯に描いた作品でした。この現状は今いろんな人が抱えている問題と共通しているはず…だから目を背けてはいけない。
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