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生きちゃったのHrtのレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
3.8
不倫現場を目撃したことは自分の人生には無いが厚久が奈津美に対して怒ることもできないあのどうしようもない感情の行き場の無さは痛いほど伝わってくる。
かなり辛い作品だった。人間の深い部分とでも言えばいいのか、浅ましい本性なのか区別できない。
ただこの作品は確実に日本の社会性を描いているし、それに付随する感情も濁流のように流れている。
不倫された挙句に離婚、家も追い出されお金も取られる散々な目に遭う厚久。彼を家に招き入れ親友として支える武田。この2人の関係だけが本作で唯一信用に値する。
奈津美は奈津美で相当な覚悟を持って不倫相手と娘との3人暮らしを厚久を追い出して始めるが、その覚悟を2回目に口にするシーンで取り返しのつかない事態に陥る。
それがものすごく苦しい。覚悟した故に救われなかったからだ。
不公平、と言うのは違うかもしれないがあまりに不条理なことが起きまくる。
これはある人の一生と同等と言っていいだろう。
親の行為に振り回される優しい娘の姿にも辛くなる。
徹頭徹尾辛い映画体験だった。
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