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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のMKのレビュー・感想・評価

4.2
反知性主義なのかは確信が持てないが、伝統的で保守的であれといったアプローチが三島由紀夫が好きな理由なのかもしれない。形而上学的で普遍的な知性からのアプローチかはたまた自然主義的な人間の叡智なのか。でも原始的で熱を帯びた芸術家や表現者は大好き。そして敗戦を経験した芸術家はやはり一味違うなとも。

どちらも西洋の概念に囚われた権威主義的な知性や権威への違和感と反感だったのかなぁとも思った。どちらもスタートは西洋文明と自らを相対化せざるを得なくて、戦争という圧倒的な暴力装置でその有り様を見せつけられ、自分のルーツを否定せざるを得ない葛藤の中から、根源的な自らのアイデンティティを時間の系譜に委ねることを、生まれた時から西洋の豊かさの恩恵を謳歌する世間とそれに忖度しまくりの権力に違和感を感じ、あらゆる価値観に囚われないユニバーサルな空間を作り上げようとすること。

自分には原理主義にも思えたけど、自分のルーツと向き合い、国体、歴史、時間の大いなる流れの中にあって自分を客観視する視点はやはり批判も揶揄もされるけど、一人の人物としてどうにも魅力的だった。

そんな三島由紀夫と東大全共闘との論戦を描いたこの作品。

とっても上品でありかつ攻撃的な口喧嘩。おそらく双方とも相手を理解し、尊敬しているからこそのウィットに富んだ、しかも鋭利な言葉の応酬。

世界レベルの賞賛を得た成功者であり憂国者、そんな大

でもなんとなく三島由紀夫の学生に対する共感と愛情を感じずにはいられない。
ルーツは異なっても国を憂う気持ちは同じ。翼が右でも左でも、体制側の品の良い知性に迎合することなく未来を思い描いた双方のロジックは大変勉強になった。

芥正彦氏の言葉も秀逸、
お前らと同調はするが何かが違う
敬意を表しあうというのも会話のひとつ
媒体として言葉に力があった時代の最後

そして三島由紀夫の最後のセリフ。

諸君の熱情は信じます。それ以外のものは信じなくてもこれだけは信じます。

やっぱり武士のようでもあってダンディでもあった。

対峙すべきはあやふやで曖昧な日本、肝に命じておきたい。
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