この複雑な構造を支えるのは、4人の女優たちだ。ジナス自身が「この映画は彼女たちによる、彼女たちのための映画だ」と明言する通り、『ラ・フロール』は何よりも女優映画だ。エリサ・カリカホ、バレリア・コレア、ピラール・ガンボア、ラウラ・パレデス。彼女たちは劇団Piel de Lava(溶岩の皮膚)のメンバーであり、ジナスは2005年に彼女たちの舞台を観て、この映画を構想し始めた。10年の歳月をかけて撮影された『ラ・フロール』は、彼女たちの成長の記録でもある。興味深いのは、4人の女優が物理的に似ているという点だ。全員が黒髪で、肌は白く、体型も似通っている。ある批評家は彼女たちを「テーマのバリエーション」と評した。一見して誰が誰かを区別するのに少し時間がかかるのだ。この曖昧さは意図的なものであり、エピソードごとに彼女たちが全く異なる役を演じるとき、観客は常に僅かな混乱の中に置かれる。しかしこの混乱こそが、映画の魅力の一部だ。我々は彼女たちを個々の俳優としてではなく、何か超越的な存在、映画そのものの化身のようなものとして見始める。彼女たちは科学者にも、歌手にも、スパイにも、魔女にもなる。そしてその変容を目撃することが、『ラ・フロール』の中心的な快楽なのだ。
また、この映画はラウラ、エリサ、バレリア、ピラーという四人の女優についての映画であり、彼女たちのための映画でもある。四人はそれぞれの作品で異なる役を演じることで、全てを一つにまとめる役割を果たす。彼女たちは Piel de Lava と呼ばれる四人組の劇団のメンバーであり、中でもラウラはマティアス・ピニェイロ作品に出演するなど四人の中では比較的知名度もある。ちなみに、ピニェイロのミューズであるアグスティナ・ムニョスも第三部で投げナイフの達人バルバラとして登場している。
ジャン・ルノワール『ピクニック』をモノクロサイレントで現代に完全再現した話。47分。四人の女優は一切登場しない。冒頭でシニャスが明かした通り、始まりを持って終わりを持つ唯一のパートなのだが、そりゃ『ピクニック』を完全再現したら始まりも終わりもあるでしょうと思ってしまう。ちなみに、小舟で男女が遊びに行くシーンは現代らしく(?)複葉機のアクロバット飛行の映像に置き換えられている。そんな感じの現代アレンジは妙に様になっていて、『めまい』を再構築した『The Green Fog』を初めて観たときの"あのシーンがこんなタッチで再現されるのか"という感覚を思い出した。シニャスとしては崇拝するジャン・ルノワールの作品の中でも一番の傑作としている『ピクニック』をシャドウイングすることで、その技術やスタイルを学び取ろうとしたらしい。