次郎

MINAMATAーミナマターの次郎のレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.9
髪ボサ&髭もじゃなジョニー・デップが何故か庵野秀明感あるのは笑ったけど、作品として思ったより良かった。前半部分の机上ラインにカメラを置いた切り返しは小津安二郎みがあったし、三度傘を被った人々を上から撮ったシーンは間違いなくヒッチコック『海外特派員』へのオマージュだろう。映画としての構図の美しさがしっかりとフィルムに収められている。
熊本を舞台にしながらもセルビア・モンテネグロにセットを建てて撮影された故、明らかに日本の原生林と異なる風景なのはご愛嬌。この手の史実ものはドラマ性と現実との整合性に難を抱えることが多く、中途半端な感もあったけど、そうした欠点を日本人俳優の演技がきちんとカバーしていたと思う。特に、『コクソン』での名演が記憶に新しい國村隼のチッソ社長役は白眉。カメラのブレで動きのなさを誤魔化すシーンが増えた後半の中、彼の感情を読み取り辛い表情の静止画が映画としての緊張感をきちんと保っていた。
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