本当に好きなものを見つけて、とことんのめり込む事が出来たのなら、生活環境の格差は二の次として、人生の幸福は得られるのかも知れないと思わせてくれる映画です。
大学院に進めず人生に疲れを感じ始めていた2002年に松浦亜弥のMVを見てアイドルに目覚めハロプロオタ道を邁進する事になる主人公に松坂桃李をキャスティングしたことで異世界感を中和させ、クセモノ仲野太賀のウザさを見事にコメディリリーフへ転換させ、若葉竜也のズレている様でズレていない感に、実は実直な人である芹澤興人や、いい加減だけどブレない山中崇に、佇まいが常に可笑しいコカドケンタロウと云うオタク仲間のキャスティングの妙が、かけがえのないモノを繋いで行きます。
2000年初頭に人気絶大だったアイドルたちが実名で登場する現実味も相まって、懐古な趣きに付随する一歩間違えれば危険な瀬戸際をかすめながらも、最終ラインは越えずに笑いへ転換させる構図は見事です。
終盤のあるシーンで、本来は悲しい場面になって然りな状況で、オタク仲間の面々が連鎖的にクスクス笑う感じが何とも絶妙な匙加減で、ある意味至福です。冨永昌敬による人を食った脚本を、大衆中華の様な味のある庶民目線の演出で応える今泉力哉監督イズムは噛めば噛むほど味が出ます。
