keith中村

あの頃。のkeith中村のレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
5.0
 「愛がなんだ」以降の今泉力哉監督作品では、「街の上で」と本作だけ見逃してしまったんだけれど、早くもNetflixに来てることに気づいて鑑賞。
 
 2004年から2008年あたりが時代背景となっている本作ですが、タイトルと違って私には、その時代は「あのころ」じゃなく、「このごろ」ですよ。。
 劇中で松坂桃李演じる「劔くん」は、原作者の劔樹人、つまり自伝的な物語なんですが、劔さんは私より一回り程度年下。その世代だと私が感じるよりももっと昔の「あの頃」なんでしょうね。
 と思いつつも本作を観ながら、当時自分は何をしてたっけと思い返してると、私もやっぱり時間が経ったんだなあ、と実感しました。
 ボンダイブルーの初代iMacは懐かしいし、最初はみんなガラケーだ。それが時代が進むとスマホに変わっていく。
 2008年は日本で初めてiPhoneが発売された年ですね。ずっと携帯電話を持っていなかった私が、30歳の誕生日前日、発売日に手に入れた初めての携帯電話がそれでした。2008年はケータイを持ってない方が少数派だったし、私もすでに社用携帯は持たされてたけど。
 あと、劇中ではSNSもmixiからtwitterに変わっていく。
 
 私はハロオタでもドルオタでもなかったけど、本作で描かれる「何かにのめり込む情熱」は普遍的なものなので、共感できます。
 本作は、こないだレビューした「くれなずめ」との共通点も多いんですが、「仲間の一人が死ぬ」のほか、「そこそこいい歳の大人になっても、馬鹿で寒くてイタいワチャワチャをやってる」というのがあります。
 この2作は(って、ほかにもそんな作品はいっぱいあるけど)、そのノリに「乗れる」かどうかで、評価が変わってくるんでしょうね。私自身、もし登場人物たちと同世代で観たなら、嫌悪感のほうが勝るんだろうと思います。
 こういうところが歳を取ってから映画を観るメリットね。「おうおう。若いんだから、どんどん馬鹿やっちゃいなさい」って気持ちで肯定できちゃう。
 
 さて、ここからは、本作にほとんど関係ない、個人的な話になりますので、読まなくっても全然平気ですよ。
 
 本作の始まりと同じ2004年だったと思うんですが、新しくバンドを組んだんですよ(もちろんアマチュアね。あと、コピー専門バンド)。
 いや、ほかに、1993年くらいから組んでたバンドもずっと活動してたんですが(そっちももちろんアマチュアね)、この年、掛け持ちというか、全然別のメンバーで別のバンドも結成したんです。
 Vo、Gt、Ba、Dr、Keyの5人構成。Voは20台女性。あと、Gtは私と同じ昭和43年生まれのアメリカ人(←こないだのレビューに続き、アメリカ人を年号で表現してみる)。そういや、当時彼に貸したテレキャスターは、まだ貸しっぱなしだな。
 本作冒頭では松坂桃李が「Fenderなんか100年早いわ!」って罵倒されてたけど、私のテレキャスはUSAじゃなくフェンジャパだったから、まあ借りパチされてもいいや。
 ともかく、その新たなバンドでは、ボーカルが女性だから女性の曲をやろうってことになって、いくつか課題曲を決めた。その中に「♡桃色片想い♡」がありました。
 
 私はギターがいちばん得意なんだけど、ギターしかできないアメリカ人にそのパートを任せ、仕方なしにキーボードに回った。
 でも、ギター、ベース二人とも耳コピできないし、譜面も読めなかったんです。タブ譜は何とか読めた。
 わたしゃ、その二人のために、「♡桃色片想い♡」耳コピして、ギターとベースのタブ譜に起こしましたよ。
 
 で、ここで話がさらに逸れるというか、遡るんだけれど、つんく♂さんに触れよう。
 最初に見たのは、番組が何だったか忘れたけど、朝のワイドショー。
 キャスターが「デビューアルバム『炸裂!へなちょこパンチ』がリリースされたばかりのシャ乱Qのみなさんです」と紹介して、そこで確か「ラーメン大好き小池さん」を演奏したのね。
 今調べると、それは1992年ですね。私が大学6年生の時。←書き間違いでもなければ、医学部でもないからな! ダブったんだよ! いや、トリプったんだよ!
 
 私は当時爆スラやUNICORN、筋少のファンだったので、「何だ。また、コミックバンド的なエピゴーネンが出てきたのかよ」と、(今から思えば、ごめんなさい!)結構馬鹿にしてたんだ。
 で、しばらくして「シングルベッド」がヒットした時も、「コミック路線を貫くんならまだ評価できるけど、結局売れ線に走ったのかよ!」とか思っちゃった。いや、もう、ほんとうにごめんなさい。すみませんでした。
 
 ともかく、その10年ばかり後、上に書いたバンドで「♡桃色片想い♡」を耳コピしたんですよ。
 そしたら、この曲、コード進行が頭おかしくなるくらい狂ってて、クールで、超絶カッコいいんです。
 それこそ、「ビートルズのコード進行、狂ってるわ!」の感覚と同じものを味わった。
 もうね。「つんく、凄げ~!」ってなりましたよ。
 しかも同じ昭和43年生まれ(←結構いっつもこだわるよな、俺!)。
 つーか、さっき調べるまで2,3歳上だと思ってたわ! 同いかよ! いや、月レベルで言うと年下なんかよ!
 こっちがアマチュア・バンドでつんくさんの曲を耳コピしてた時、そっちはモー娘。をプロデュースして、全国を熱狂させてたのかよ!
 どんだけ凄いんだよ!
 
 話を本作に戻しましょう。
 今泉監督なんで、演出はもう盤石なんですが、それに加えて俳優陣がみんなよかった。
 主演の「恋愛研究会」の面々、全員素晴らしかったですよね。
 関西出身の役者さんばかりじゃないのに、ネイティブ関西人が聴いても全然違和感がない台詞回し。
 とりわけ、キーパーソンとしては、仲野大賀さん。もう近作全部素晴らしい。
 あと、握手会のシーンの松浦亜弥にびっくりしました。
 「えっ? 本人? 『ローグ・ワン』のレイア姫みたく加工してるの?!」なんて思ってたら、「BEYOOOOONDS」の山﨑夢羽さんという人らしい。
 俺、仲野大賀演ずるコズミンと違って、まだ生きてるけど、「BEYOOOOONDS」って知らなかったわ!
 オジサンになったもんだなあ。
 
 まあ、でも、いいや。
 本作のメッセージ通り、私も「どれだけ歳を取っても、今がいちばん楽しい」って状態で暮らし続けてるからさ!