えいがうるふ

あの頃。のえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

あの頃。(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

分からんでもない。ただ、ドルオタ男子の青春が実際にこんなふうにゴリゴリのホモソベースのグダグダ展開なのだとしたら、悪い方の想像通り過ぎてあまりの痛々しさに切なくなる。

松坂桃李の作品によってイケメンオーラをちゃんと消せるとこは感心する。よく見ると決して悪くないルックスなのにキャラのせいで全くそう見えない残念な青年そのものだった。
質より量で勝負のような和製グループアイドル業界にあって、そのジャンルに特に思い入れのない私でも松浦亜弥はピンでイケるアイドルとして認識していた一人だったので、一応話の流れから置いていかれずに済んだ。

でもやはりこの作品の主役は太賀でしょう。最高にキモくて性格歪んでて、恐らく一般にイメージされる非モテ系ドルオタの最悪例を全力で好演していた。
後半の病院抜け出してライブに出演するハイライトシーンのコズミンはめっちゃ健康そうだし歌もダントツ声出てるしどこが末期ガンだよと鼻白んだが、その分終盤の本人の衰弱ぶりが容赦なくシビアに伝わってきて、その落差がそのままオタ活に青春を捧げた一人の孤独な男の人生の明暗としてほろ苦く描かれていた。

今泉監督は、若者というには実はそれほど若くもない世代がうまく大人になれないままグダグダと生きていく様、その生々しくも痛々しい生態を切り取って映像化するのが本当にうまいなと思う。