ノラネコの呑んで観るシネマ

おらおらでひとりいぐものノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

おらおらでひとりいぐも(2020年製作の映画)
4.3
沖田修一版の「ツリー・オブ・ライフ」。
東北で生まれ、大恋愛した夫に先立たれ、今は郊外の一軒家で一人暮らしをしている田中裕子の日常。
腰痛持ちで、日課は病院通いと図書館で古代生物の本を借りて「研究」すること。
子供たちとは疎遠になっている。
彼女の寂しさが生み出した、三人のおっさんのイマジナリーフレンドが、唯一の近しい話し相手。
主人公の若き日を蒼井優が演じ、現在の主人公のモノローグも彼女。
ぶっちゃけ何も起こらないが、日々の営みが地層の様に重なり、今の主人公を形作っている。 
彼女の中には今までの人生だけでなく、脈々と受け継がれてきた一族の血、さらにはこの地球が生まれた日からの日常が無限に積み重なっている。
自らの中の命の重なりが、主人公を悠久の歴史への憧れへとかき立てる。
彼女の愛も孤独も、全ては世界とリンクしているんだな。
こんなミニマムな話なのに、見えてくる世界観は壮大。
二人一役の田中裕子と蒼井優が素晴らしい。
命をつなぐ食事の描写がやたらと多いのは、いかにも沖田修一。
ただイマジナリーフレンドの位置付けは、あまり掘り下げられているとは思えず。
まあ、彼らがいないと間がもたないんだけどさ。
そもそも、なんでおっさんなのだろう?