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ジャックは一体何をした?のdm10foreverのレビュー・感想・評価

ジャックは一体何をした?(2017年製作の映画)
3.4
【ジャックが何をしたかは知らんけど・・・】

や~~~~~~~~~~~~
日本勝ったねぇぇぇ!!
凄いんですけどぉ、凄いんですけどぉ!
昨日の晩は枕に顔を埋めて叫びすぎたせいで、最期の方は吐きそうになっちゃったよ(笑)

・・思えば「ドーハの悲劇」と呼ばれたあの日のあの瞬間。
「え?何?え?え?・・・」って言うだけで、あまりの衝撃の凄さに涙も出なかった。
その後、日本はもう一度泥水の中から立ち上がって次のワールドカップ出場(初出場)に繋がっていったんだけど、やっぱりあの時の代表チーム(いわゆるドーハ組)には特別な思い入れもあってさ。
カズとかラモスとか井原とか松永とか・・・。
そんな中、地味だけど重要なピースだったのが「ポイチ」こと現代表監督の森保一さん。

よくスポーツ選手が「あの時の忘れ物を取りに~」なんて言うけど、そういった意味ではポイチさんを含めあの時「ドーハ」という地名に「絶望」という意味が付け加えられた多くの日本人が、ずっとあそこに「忘れ物」を置きっ放しだったんだよね。
実はあの後も日本代表は何度かドーハで試合をしていて普通に勝ってもいるし、何なら2011年にはドーハで行われたアジアカップでチャンピオンにもなっています。
でも・・・やっぱりW杯のケリはW杯でつけなきゃ・・・
試合を見ながらそんなおセンチな感傷に浸っていたら、30年前に泣けなかった分も合わせて昨日の夜一人でしっぽりと泣かせていただきました。

・・・ってなところで、本題(急カーブはお手の物)。

この作品ってどうなの?
シュールもここまで突き通すと「何かありそうな世界」に見えてくる。

よく、ディズニー映画で何の躊躇いもなく物や動物を擬人化して一つのお話しが成立していたり、バックスバニーでお馴染みの「カートゥンアニメ」なんかでも人間と動物が普通に会話していたりするのって、やっぱり何処まで行っても「ファンタジー」の世界観から抜けることってないじゃないですか。

今作はまるでそこを逆手に取ったかのように「リアルな輪郭」で描いてみると、実はそれってなんとも歪でグロテスクな世界観なんだなっていうことがわかる一作。

ただ、この作品って何も「動物と人間の微笑ましい一コマ」を描いてやろうなんて、これっぽっちも思ってないですよね。
それこそ、アメリカの、それも80年代あたりの「ちょっと擦れた映画」なんかでよく見かけたような、気弱な奴のことを「チキン野郎」って呼んだり、警察のことを「ピッグ」「ベーコン」って呼んだり、「モンキー」なんてのもそう、単に日本人(アジア人)を侮蔑するってだけじゃなく、もっと広範囲に対して「好意的とはいえない表現」で動物の名前が出てくることがあるんだけど、そこを「比喩」ではなく「まんまそれ」でやってみたらこうなりましたっていう感じ。

「所詮あいつは鶏さ・・・・」・・・でしょうね。
「猿にそんな事が出来るのかよ?!」・・・でしょうね。
「コーヒーお持ちしました。遅くなって申し訳ございません」
「釣はいらないよ」・・・猿の心遣いに感謝。

ある事件の容疑者(猿)のジャックに対峙するのはデヴィッド・リンチ演じる一人の刑事。
相手は猿だけど、あくまでも対等に話をする。
擬人化というよりは「そもそも論の世界観」の中での関係性。
ここで、中途半端にファンタジーを絡めてしまうとコメディにしかならないけど、この作品では最期までシリアス一辺倒で通した。
核心に迫ろうとする刑事と、のらりくらりと話を変えながらも徐々に熱を帯びていくジャック(猿)。
普通の「取調べ風景」だけど、見た目は「人間VS猿」。
ぶっちゃけ、ジャックが真犯人かどうかよりも、刑事とのウィットに富んだ会話のやりとりをする猿っていう光景が徐々にジワる。

これは長編でダラダラやるタイプの作品ではないね。
言ってみれば「鮮度」が命。
そう考えると、これは17分の短編で正解。

結局「何を見せられたんだろうか?」と思いながらも、何故か印象に残ってしまう不思議な一本でした。
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