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白い暴動のblacknessfallのレビュー・感想・評価

白い暴動(2019年製作の映画)
3.9
てっきりロック・アゲインスト・レイシズム・フェスのライヴ映像が中心のドキュメンタリーだと思ってたけど、ロック・アゲインスト・レイシズム運動の成り立ちからフェスまでの道程を画いたやつだったんだね。

70年代後半のイギリスは経済的に行き詰まり閉塞感に満ちていた。経済政策の失敗を有色人種の移民達に責任転嫁した国粋主義団体ナショナル・フロントが広い支持を得てレイシズムの嵐が吹き荒れていた。

そんな唾棄すべき風潮に抗う目的でロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)が誕生した。これ、パンクス方面から起こったムーブメントだと思ってたけど、発起人はレッド・ソーダスという芸術家の人で思想的なバックボーンはヒッピーに近い人なんだよね。
レッド・ソーダスの反レイシズムの活動に共鳴したパンク世代の若者達、パンク・バンド、レゲエ・バンドが集結してナショナル・フロント等の差別団体にカウンター攻撃を仕掛ける。
パンクと言うとヒッピー嫌いのイメージがあり、それは事実なんだけど反レイシズムの旗の下にカウンター・カルチャーとして大同団結できたのは感動的。
どちらも既存の抑圧的な価値の否定ということでは実は同根なんだよ。反抗のスタイルや方法論は違うけど。

有色人種のコミュニティでヘイトスピーチを撒き散らしデモ行進するナショナル・フロントがカウンターに集まったRARのメンバーと賛同者達に取り囲まれデモが中止に追い込まれる。RARは確かな成果を上げムーブメントは全国的な広まりを見せる。
この下りはパンクスじゃなくても反差別という当たり前の良識を持つ人なら感動せずにはおれないと思う。
ナショナル・フロントとRARの衝突シーンで警察は終始ナショナル・フロントをがっちりガードしてんだよね、差別発言もデモだからOKだと言わんばかりに。ナショナル・フロントのリーダーが警察に感謝の弁を述べるシーンがある。警察は完全にレイシストの味方なんだよ。ここで、在特会の新大久保のデモのカウンターに参加した時のことが鮮明に蘇ったね。「朝鮮人は殺せ」みたいなシュプレヒコールは野放しでカウンターの人達を排除しようとしたんだよ、あいつらは👮Fuck The Police!A.C.A.B!

それはともかく、大きなうねりなったRARムーブメントの大きな果実としてRAR・フェスが開催される。
ライヴ映像で流れるのはCLASHのホワイト・ライオット。
ゲスト・ボーカルでSham 69のジミー・パーシーの力強い歌唱とCLASHの熱い演奏は素晴らしいんだけど、実はあんまCLASH好きじゃないんでそんなに感動はしなかった笑
CLASHのファッションはテッズ流れの妙に小綺麗なスタイルだし、曲も前時代のロックを引きずり過ぎていてパンクって感じがしないんだよね笑 そして何より優等生臭が強い笑 苦手な要素が多すぎるんだよ笑
sham69のが好きなんで彼等のif kids are unitedが聴きたかった。RARの主旨にも合ってるし。

それとナショナル・フロントのメンバーにスキン・ヘッド、所謂スキンズの若者が多く映ってる。世界的にイメージされてるスキンズ=レイシストな感じの画なんだけど、これは完全な誤解で元々スキンズカルチャーにレイシズムはなかったんだけど、ナショナル・フロントが一部のスキンズ達の心を捉え増殖していったんだよ。スキンズのワーキングクラス魂の理解者のふりをして。
大半のスキンズはアンチ・レイシズムかノンポリで、実際にスキンズのバンド達、所謂Oi! punkのバンドのほとんどが反レイシズム。代表的なバンドのエンジェリック・アップスターツ、ザ・ビジネスは思想的に対立点の多いと言われるガチなアナーキズムを掲げるAnarcho punk系のバンドと交流があった。ザ・ビジネスに至ってはAnarcho punkの代名詞CRASSの曲をカバーしている。
何でこんな、もはやあまり映画の内容と関係ないスキンズの解説をしてるかと言うと、スキンズカルチャーもOi! punk大好きなんで誤解してる人が多いのが歯がゆいからなんだよ笑
なので、"スキンズ≠レイシスト"、これ覚えてね笑

あとね、この当時のイギリス、現在の我が国にそっくりだよな、不景気とレイシズムが蔓延してるとこが。
そんな国がオリンピックやるなんて欺瞞と不遜以外の何者でもないんだよ。
政権与党の議員が異民族や同性愛者、困窮者を貶める発言をし、それが処罰もされず放置され、同性婚すら認めない国が多様性をお題目にしてるイベントなんてやる資格ないんだよ笑 しかも今、他にやるらなきゃいけないことあるよね?
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