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83歳のやさしいスパイのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

祖母を思い出した。もう何年も前に施設を訪れてから一度も顔を合わせていない。最後に会ったときも私のことを覚えていない様子だった。それでも今、私が彼女を訪れたら少しでも孤独を癒すことができるのだろうか。そんなことを感じ、考えさせられる時間だった。

本作は特養ホームに預けた自分の母が施設職員に虐待されているか確かめてほしいという依頼のもと、80代の探偵が一入居者となり、捜査を行うというドキュメンタリー映画だ。どのレビューでも指摘されている通り、良い意味でとてもドキュメンタリー映画とは思えない仕上がりで、物語(と言うと語弊があるだろうか)も演出も素晴らしかった。ただ、それらによって描かれた行き届いたスタッフの心遣いや整った施設環境はかえって入居者の孤独を際立たせており、何とも切ない気持ちになった。それはまた潜入した探偵も同じ気持ちだったのだろう。

家族が自分を気にかけてくれることがどんなに幸せなことか、、悲しいかな、人間は失って初めて気づくものである。私も生きているうちに祖母に会いたくなった。コロナが落ち着いたらぜひ会いに行って、少しでも成長した姿を見せられたらと思う。たとえ彼女が私のことを覚えていたとしても、覚えていなかったとしても、、
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