グラビティボルト

ドリーム・ホースのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

ドリーム・ホース(2020年製作の映画)
3.7
2023年初新作映画鑑賞。
絶妙なポイントを突いてくる良作だったと思う。
トニ・コレットらは確かに出資をして、調教師を手配していくけど、
実際にレースをする馬とはほぼ触れ合えないし、レース中はただ祈り、聞こえぬ声援を飛ばすしかない。
それでも人は馬に夢を視る。

レースの主導権は馬に握られ、人間がレース前に出来る作戦等というものはほぼ無くて、競走馬を育てる過程で夫婦中、家族中がより深まる描写、あるいは徹底的に死別してしまうドラマに注力されている。
それ故に馬と人間が結束する無茶なドラマに振り切らない誠実さ。

主人公であるトニ・コレットのドラマ、正直中盤で終わってしまっていて、さり気なくダミアン・ルイス演じる小金持ちにフォーカスしているので、みみっちいギャンブラーの映画になっているのも小気味よい味わい。
ラストのレース後、盛り上がる他メンバーから離れてコースを見詰める情感ね。

あと、勝つ事ではなく、挑戦のスタート地点から関わる事、皆で一点を見詰める事、喝采を上げる事、そもそも集まって騒ぐ事自体を讃えてる作品だと感じた。
弱者と言われると極端に弱い訳ではない、著しく傷付いた訳ではない、少し行き詰まった連中の連帯と願望。
ここを外してないから面白い。