えむ

ナイトメア・アリーのえむのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.8
デルトロ監督、独特のどこか暗く隠微な映像美に彩られた本作。

予告編を見ていた時は、もっとミステリ・サスペンス要素が強いストーリーかなと思ったけれど、実際にはよりストレートに人の持つ闇を描き出す作品だった。

主人公は、人を出し抜き、利用し、インチキ占い師としてのし上がっていくけれど、最後にはその驕りによって足元を掬われ破滅していく。

結局は人のことを見てはいないし、常に自分の闇に飲み込まれているから真実が見えないのだ。

そして、自分は優れている、誰か相手を出し抜いていると信じ込み、自分を見極めることができない。

誰の失敗の原因は結局は自分を見ることが出来ず、信じる虚構だけをみて驕り高ぶり、場を支配していると思い込んだことにある。

そんな彼を、真実を見極めた周りは出し抜き、利用し、踏み台にしていく。
あるいは取り残して先に進んでいく。


哀れな最期は因果応報としか言いようがない。

当初、ディカプリオにオファーがあったという話も聞いたけれど、もしこれをディカプリオがやっていたら、もっと血の気の多いペテン師ぶりを発揮していたような感じがする。

その点、ブラッドリー・クーパーの方がどこかストレートに愚かさが前面に出る雰囲気で、こっちで正解だった気がする。

闇に飲まれて盲目になりそうな感じ、こっちの方が説得力ある。

ケイト・ブランシェットは怖かった。
よくこの人相手に自分が勝ててるとか、うまくやれてるって思えたな、逆にそれがすごいぞ。

本当に賢い、あるいは見極めてる人は、それをひけらかしたりしないで、相手に優位に立ててると思い込ませるものなのよ。
それがホンモノよ。


個人的にはタロット占いのジーナがとても好きだった。
彼女は真実を最初から見てたね。
えむ

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