HicK

マーベルズのHicKのレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
3.2
《"ファスト映画"》

【入れ替わり】
入れ替わりながらの戦闘が新鮮。そこからコメディー要素も生まれれば、起死回生のチャンスになったり、思わぬアクシデントも呼ぶ。アイディア賞をあげたい。

【スキップ演出】
「入れ替わる」って、物語を手っ取り早く進められる方法だなぁと思った。物理的制限がないから、無条件で登場人物たちに会わせたい人をすぐ会わせられる。なので、特に3人の序盤のシーンでは、"起"がスキップされているような感覚だった。

中盤で3人が使用する"思い出ふりかえり装置"も手っ取り早い。会話せずとも過去の出来事を共有。回想を済ませたら、即「じゃ、本題ね」って感じで次のシーンに。

【なので、高速過ぎる】
テンポ重視の演出は効率的な運びだなと思いつつも、かなり味気ない。一悶着な場面も、感傷的な場面も全部サラッとしているのでもったいなくも思った。あと、「こうだから、こうすればいいんだ!」とひらめく場面も腑に落ちないままスンナリ進んでいくので、高速テンポのなか更に置いてかれる感覚。そしてアッサリと敵を倒した後は、MCU続編の舞台作りで忙しい終盤だった。それに呑まれるモニカ・ランボー。

【演出】
「ブラックパンサー」のバイブを持ってきたようなダンスシーン。いきなりのミュージカルも。色々挑戦してる。脚本はそんなに、って感じだったが、演出面だけで考えると監督のキャリアの浅さにしてはちゃんとMCU内に溶け込んでいる作風にも感じる。ニア・ダコスタ監督の努力なのかな。新鋭起用の多いスタジオだから、なんだかんだ言ってサポート体制は優れてるのかも。

【その他】
フェーズ4、5はずっと「別の次元が開いた!」っていうストーリーを繰り返してるので、いつまで足踏み状態を続けるのか気になる。エンドゲーム以降は「マルチバースサーガ」って言われてるけど、ずっと「マルチバースに入る前のサーガ」。

【ミッドクレジット】
薄らジョン・オットマンの楽曲が流れてきて感動。これに全部もってかれた。同じ俳優K.Gが演じるB。ありがたい。(だけどフルCGにしない方が良かった)。

【総括】
アクションシーンは楽しい。でも肝心なドラマパートがスピード感に呑まれてる。全ての演出が"早送り"な作品だった。

もしかすると一時的な緊迫感やモヤモヤ感が苦手な人にとっては「こういうので良いんだよ」な作品かもしれない。物語的な降下を最小限に抑え、要点だけ突いた作風は感覚的にYouTubeで話題に上がった"ファスト映画"に近いものを感じた。(ちなみに自分はスポーツ観戦やドッキリ番組のハラハラ感が苦手なので、理解できる部分はある)。

見終わった後に考えると、そもそも「3人」じゃなくて、キャロルとモニカの物語を1本の作品として見たかったなぁと思った。カマラはもうドラマで丁寧に成長が描かれてるので。この辺もシネマティックユニバースならではの残念な副作用だと思う。
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