祖母はちゃきちゃきした人だった。
会うたびに「大きくなったねえ」と言い、
泊まりに行ったら次の日の朝にも
「大きくなったねえ」と言うような人だった。
20歳を越えてからも
「大きくなったねぇ」
「いやもうならないよ…」
「アタシが縮んだのか！ガッハッハ！」
という鉄板ギャグを何度も繰り返した。
なんとか身長は追い抜いたけど、祖母はどちらかというと他人を置き去りにしてどんどん前に進む人だった。
そんな祖母が膵臓がんの手術後、せん妄・認知症によって現実に置き去りにされるのはどんなにショックだったろう。
そしてもう「大きくなったねえ」と言ってくれない祖母を見てどれだけショックだったか。
その渦巻く感情をミステリーにホラーにコメディに昇華してくれた素晴らしい映画だった。
この映画のおかげで“悲しい”という想いが以前より少し消えた。
楽しかった思い出を“悲しい”で上書きしてしまうのは勿体ないな、と。
それくらいアンソニー・ホプキンスがキュートだったから。
私の祖母にも負けないくらい。
