このレビューはネタバレを含みます
アンソニー・ホプキンスが認知症の老人を圧巻の演技力で魅せるミステリータッチのヒューマン・ドラマ。簡単に言えば認知症の人の世界を追体験する作品。
いやーそこらのホラー映画より全然怖い。認知症の人は日常がこういう風に見えているのかと。さっき会った人の顔がコロコロ変わったり、始めに聞いた話と全く違ったり、虐待されるという妄想を見たり、、、いったい何が真実なのか分からない。自分が自分じゃなくなっていく感覚、もう恐怖しかない。
この映画を観てたら認知症だった祖母を思い出した。アンのように家族が別人になっていくのを見るのは本当に耐え難いと思う。作中のポールのようにイライラしてしまうのも気持ちが凄い分かる。この病気の深刻さをよく理解していないからこそ辛く当たってしまうのだと思う。
ラストシーンで孤独感に耐えられず泣き崩れるアンソニーが本当に居た堪れない。葉や枝や風を失ったと嘆くアンソニーの横で非情にも燦々と太陽が輝き風に吹かれて木々の葉がなびく光景が印象的だった。