タキ

佐々木、イン、マイマインのタキのネタバレレビュー・内容・結末

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

佐々木は剽軽で人好きのする性格だが実は家庭に問題があり家は荒れ放題、自分の未来をうまく思い描けず口には出さないが18歳にして人生を諦めている様子だ。ツラくて悲しくてやりきれない想いをかかえていても周りには平気な顔をして虚勢を張り教室で佐々木コールの中、全裸で踊り狂ったりする。この強烈なホモソノリにいくら仲良し4人組とはいえフツーにイジメじゃないのと直感的に思ったし、見終わったあとも彼が未来への可能性に満ちた級友と対等、もしくはもっと上であろうとした手段があれしかなかったんじゃないかと思っている。繰り返される佐々木コールのシーンはあとになって意味をもって悠二の前に立ち塞がる。高校卒業後疎遠となっていた佐々木が急死したとの知らせを受け、あわてて故郷に戻った悠二と多田は木村が運転する車の中でこんな会話をする。
悠二「俺たちが脱がしてたのかな、だったらもしあの時佐々木コールしてたら…」
多田「悠二、佐々木あのまんまいい顔してたな。誰も、なにも、わるくないんだよ…。」
多田はリアリストらしくそう言うが、父親を亡くしたことで教師も級友も憐憫の表情を浮かべ、佐々木コールもなく身の置き所を失った佐々木の心情に悠二は初めて気づき、「お前は好きなことしろ」と言って涙を零したあの日の佐々木になにかしてやれたのではないかと思ったに違いない。
友人の中には結婚し子どもが生まれるほどに月日は経ってしまったが佐々木だけが青春の続きのまま逝ってしまった。不器用に生きながらも一目惚れした苗村との交流、バッティングセンターでのホームラン1位の腕前など佐々木の人生にも彩りがあったことが救いだ。ラストシーン、ホモソノリを懐古するでもなく否定するでもないあの頃とは明らかに違う幼く未熟だった自分たちと共に葬ろうとするかのような佐々木コールが胸に迫る。残された彼らがあの時の後悔を昇華する方法はたったひとつ佐々木コール以外になかったのだ、と私は解釈した。
心の中の佐々木、というタイトルから考えるに、どのシーンも悠二のフィルターを通した思い出の中の佐々木であり、あの頃のリアルな佐々木とはちょっと違うのかもしれない。本当は悠二の見た佐々木の物語を解釈することは悠二にしか許されない行為なのかもしれないし私の見たのは佐々木に似た青春でしかないのかもしれない。
こういう青春映画は自己を投影することも多くレビューもそれぞれ読み応えがあって観賞後の楽しみが続いている。

宇多丸、『佐々木、イン、マイマイン』を語る!【映画評書き起こし】 ↓
https://news.radiko.jp/article/station/TBS/48868/

ポスターがバスッとカッコイイ
「佐々木、イン、マイマイン」公式サイト↓
https://sasaki-in-my-mind.com/

映画『佐々木、イン、マイマイン』
内山拓也監督
【インタビュー】 https://tokushu.eiga-log.com/interview/60611.html

「カッコ悪いことも肯定したい」 内山拓也監督の映画哲学
https://tokion.jp/2020/11/23/takuya-uchiyamas-film-philosophy/

【藤原季節×細川岳×内山拓也監督 インタビュー】
負けていった人たちの味方でありたい。諦めなかった自分を積み上げ、鼓舞していく https://www.pintscope.com/interview/fujiwara-hosokawa-uchiyama/

藤原季節×内山拓也監督『佐々木、イン、マイマイン』対談 「三振かホームランしか狙っていない」
https://realsound.jp/movie/2020/12/post-665900.html

[インタビュー]『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督×藤原季節×細川岳 https://cinemotion.jp/2020/12/09/sasaki-in-my-mind/

内田拓也監督×井口理インタビュー
https://screenonline.jp/SCREEN_Plus/17411893

沖田修一×内山拓也インタビュー
https://natalie.mu/eiga/pp/pff2021
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