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逃げた女のKtoのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
3.8
【ひとこと説明】
5年振りに夫のいない数日間を過ごす女が、何人かの旧友と話すことで「人生、色々なんやなぁ」ってぼんやり感じてそうな映画

【感想】
個人的に初ホン・サンス作品、UNEXTで鑑賞。ホン・サンスの映画とはこういうことなのか…と理解した。

ロメールともしばしば比較されるが、冗長で地味でストーリーを推進する様なパワーもない会話劇に、メジャー映画では根こそぎ削除されてしまう"リアルな会話の面白さとか趣"みたいなものを見出す美学があるんだと思う。

テーマを一般化し、教訓を忍ばせるタイプの作品ではなく、あくまでナンセンスさも含めた断片的な現実を切り取ることで、観客がそれぞれに異なるメッセージを見出すようになるという不思議な映画だった。

諸要素がストーリーテリングに合目的的に存在してるのではなく、大きな流れの中でランダムに散りばめられた景色・言葉・人物の風貌・性格・関係性をぼんやり眺めて各々がコンステレーション的に意味を感じなければいけない(能動性が求められるという点ではスパルタ)

なんとなく、岸雅彦の「断片的なものの社会学」の読後感に近い感覚を得た。

⚫︎離婚した先輩
緑の瓶に入った酒が美味しそう(ホンサンス映画で頻出アイテムらしい)。猫のシーンはファーストテイクらしい…笑。すごい。
正直このペースで映画が続くのはしんどいと感じた。

⚫︎芸術家の旧友
これが一番好きだった。舞台関連の仕事もやっていて、芸術家を好むオーナーの所有する住宅に住んでいて、芸術家が集う"イケてる"バーに通って、芸術家と恋愛をして(ストーカーもされて)…という、ガミから見たら華と夢がある理想的な生活を送る先輩。だけど、先輩も先輩で、そのストーカーのせいで飲み屋に行けなくなったりと、それなりに深刻な悩みも抱えてる。
隣の芝は青い。

⚫︎ウジン
スノッビーな語りを繰り返す作家である夫に、不満を募らせるウジンが最高。謝られて、フルーツ食べて、いい感じに帰ろうとしたら、煙草吸ってる作家(ウジンの夫であり、ガミの元恋人)にばったりあってきまづいね…みたいな、リアルにありそうな流れ。
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