ぴのした

なぜ君は総理大臣になれないのかのぴのしたのレビュー・感想・評価

4.0
政治ドキュメンタリーでここまで面白い映画になるんだな。小川淳也のキャラクターが映画の主人公に向きすぎている。

最初は「どうせPR映画だろ」と斜めに見ようとするのだが、途中から前のめりで食い入るように見てしまった。正直すごく小川を推したい…こんな人に国政を任せたいと思ってしまった…

と、いうのも映画で切り取られる小川は、めちゃくちゃ誠実というか、包み隠さず取り繕わず誠実に見える。例えば、民主党政権は「大失敗だった」と認め、安倍政権についても「右翼に軸足を置き、政策は中道的なものまでウイングが広い」と客観的に評価ができる。枝野さんにこれができるかと言われたら正直できない気がする。

しかも、その上でダメなところはダメと言えるし、こうしたい!というビジョンも明確で、それらを論理的に言葉にできる頭の良さと熱意のある演説ができる。

ストーリーでは、小川が初めて選挙に出たばかりの頃から追い、政権交代で初めて選挙区当選をしたとき、そして民進党から希望の党に鞍替えして戦った2017年の選挙を描く。

希望の党については小池百合子に「踏み絵」を踏まされ、散々な批判を受けての出馬。本人も民進党の中での立場があり、モヤモヤしながらの鞍替えだった。

映画の中では、実際に商店街で挨拶中、道行く人に罵倒されるシーンもある。これで良かったのかと悩み、カメラの前で涙も見せる。この等身大な姿を見ると応援したくもなるよ…。特に教授の応援演説を聞いて小川が泣くシーンは、こっちも目頭が熱くなった。

しかも家賃は4万7千円のアパートで、チンした厚揚げが好きという庶民感。「政治家の妻にはなりたくない」と笑いながら、一緒に選挙活動をしてくれる大学生の娘たちもいる。

「うまく立ち回ることが全ての今の腐った政界と、新聞社を牛耳ってるクソ対立候補のせいで、こんな素晴らしい小川がいつまで経っても上に行けへんやんけ!」というようにも取れる映画だが、こういう風なミクロなスケールで対立候補の平井を描いた映画があればきっとまた評価は違ってくるだろうし、小川を応援したい気持ちはブクブクと湧き出てくるが、あくまで一つの見方に過ぎないことは心に留めておきたい。