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水を抱く女の8637のレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
3.5
愛は何にも変えられず、ただ自分を侵食する顛末に陥らせる。その尊さ。人間に寄り付く愛の霊の恐ろしさ。
入水は愛の賭け事。その奥に、聖なる墓場。泡一粒一粒。膨大な国家の記録。愛の確認の為に零した赤ワイン。愛ゆえの、過剰な心配。それぞれの結末の余韻。
日常をそうと思わせないカメラワーク、目ですら語る哀愁、視覚・聴覚演出の多用が、この映画の質を一レベル上げた。
90分という短い時間で、神話を現代のサスペンスフルな純愛に置き換え、更に自身の作家性で躍動させる、かなり面白い映画。
隠された水の音を、僕は聴き落とさなかった。

完全に私的な考察だが、「水を抱く女」という邦題は"「水を抱いた」としても、ただ少し手触りがあるだけで無意味だ"という暗喩すらも表していたのではないかと思う。考察力が無い為にすぐに凡庸なものになってしまうのは申し訳ない。
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