Ryoma

セイント・フランシスのRyomaのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.4
30代。一般的には立派で独立した大人と位置づけられ世間的には決して若々しいとは言いきれない年代。その例外でない主人公。彼女がキャリアや結婚、出産など自分と世間を比較した葛藤や苦悩がひしひしと痛いほど伝わってきた。
出産と中絶、その決断が身体的にも精神的にもどれだけの負担や苦痛が伴うのか子育ての孤独さや中絶手術の副作用の壮絶さを本作を通して知った今だからこそ僅かながらわかる気がする。“性“という一見シリアスに思える題材の中でもほどよくユーモアが効いてたり登場人物のスカッとする行動があったり、バランスがよかった。
大人になった自分の人生が自分を育ててくれた老いていく親に対してどれだけ恩返しできているか考え苦悩する彼女には共感しかなかった。
女性と男性の妊娠や出産に対する考え方の違いが鮮烈に描かれてもいて異性にだけではなく他人への思いやる気持ちの大切さを痛感した。
女性は早々に結婚して子供を産むというアナログな考え方は廃れた時代になりつつあるとはいえ、少なからず以前からのその風習たるものや幼い頃の自分の理想と現実との乖離を気にしてしまう主人公の気持ちはわかる気がした。多くの人がそういう思いは少なからず抱えているだろしその現実を全くなかったことにすることはできないけれど、本作の登場人物の必死に生きる姿を観るとそれはそれでいいじゃないかと強く思えた。自分の残りの人生で本当にやりたいことをやればいいんだなと感じた。きっとそれが一番自分らしく生きられる道だから。
終盤30分くらいからそれまでの構成•物語すべてがいきてきてかなりぐっときたし、たくさんの愛や優しさが詰まっていた。ラストシーンは特にお気に入り。

血のつながらない大人と子どもの交流という点では、
『Giftedや『C'mon C'mon』などに類していたけど、より実生活に近い感覚で剥き出しで苦しいほどに描かれていたのが本作かな、と感じた。
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