監督のロンドン留学が始まった時期と重なるようにして、故国ポルトガルは未曾有の経済危機に瀕していた。この困難な時期に実家を離れた監督は、より故国を知りたいと思うようになり、その目を自分の家族へと向けた。本作品は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートのビジュアル・コミュニケーション修士課程で撮影した2014年の短編『Metaphor, or Sadness Inside Out』を基に、その要素を引き継いだ長編デビュー作である。ベルリン映画祭エンカウンター部門に出品され、同部門の批評家連盟賞を受賞した。
さて『The Metamorphosis of Birds』はどうだったかというと御察しの通りNot For Meであった。監督の祖父エンリキへの想い、家族の年代記とポルトガル社会に対する感情というのを16mmのペドロ・コスタ映画を彷彿とさせるバキバキに決まったショットで紡いでいる。そして、そこに詩的なナレーションを付加させていくのだが、Catarina Vasconcelosのテクニックに陶酔している感じが鼻につく。もちろん、台所の扉が開き、子どもが出てきたり、潜水艦ゲームをする場面、そしてGoogleで検索すると出てくる映えな画はどれも素敵なのだが、ナレーションの主張が激しいこともあり、だったら小説でやった方がうまくいったんじゃないかな?と思ってしまう。つまり二兎追うものは一頭も得ずをやってしまっているのだ。