このレビューはネタバレを含みます
本作はありのままに生きようとするひとりの少女(「ありのまま」と言っても、エゴイズムとすり替えて使う者の多い「ありのまま」とは全くもって性質が異なる)と、それを全力で支えようとする家族の物語である。「人生は小説より奇なり」とは良く言ったもので、本作が現実に存在する人々を描いたドキュメンタリーだということが何よりの驚きである。
私がドキュメンタリー映画で泣いたのはこれが初めてかもしれない。
初めて心理学士と会ったときにサシャが流した涙と学校から女の子と認められた後に心理学士と会ったときにサシャがまぶたに溜めた涙。この涙のコントラストにサシャが子供ながらも孤独に闘っていること(本当は子供だから、、とか言うべきではない。大人たちが想像する以上に子供たちは多くのことを感じ、多くのことと葛藤している。)、それが報われようとしていることに私も涙なしでは観られなかった。
彼女の家族、心理学士も素晴らしい。彼らが本当にサシャのことを愛し、彼女に幸せであって欲しいと願っていることを言葉からも表情からも感じることができ、これまた涙なしでは観られなかった。
最近自分が涙脆くなっただけかもしれないが、これほどまでに愛の溢れた家族が現実に存在することがどこか嬉しい。これから彼らにはさらなる試練が待っているだろうが、何とか乗り越えて幸せになって欲しい。少なくとも私は彼らを応援したいし(これはリベラルとか保守とかそんなくだらない政治的な話ではなくて、一個人として友人を応援するのと同じような感覚である)、本作を観た多くの方がサシャやその家族、同じような葛藤を抱えている方の応援団になってくれることを願いたい。