クリンクル

ドント・ルック・アップのクリンクルのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
5.0
中将が金を払わせた理由。

アダムマッケイが実話ものから完全なるフィクションの世界へ
前2作はどうしても作品内で説明する描写が必要で劇映画としての側面が薄められてしまったが、今作は純粋に人の物語
もちろん風刺たっぷりに詰め込まれているが、そこが本質にはなっていない
かといって薄まってしまったかと言うとそういうことでもない
むしろ自分にとっては前2作よりも強烈だった
それは冒頭にも書いたように金を払わせた理由というのが権力の普遍的な本質を突いていたように思えたから
一生かけても使いきれない資産を持った人間が更に運用して稼ぐだとか、余生を過ごしてもいい年齢の人が国のトップに居座り続けるなんて自分には到底理解が及ばない世界ではあるが、こういう思考のもと行われるんだろうなと納得してしまった

そして何より権力者ではない人たちのドラマが良い
『バイス』の◯◯提供者の物語、『マネーショート』のブラピと若者二人、スティーヴカレルの物語も良かったが、映画の部分的なところに収まってしまった感はある
本作の風刺は物語の中心ではなくて、そんな人々の豊かさや尊さを描くためのものだったように思える。決して権力者がいての庶民ではなく。

ラストシーンは何かを啓蒙するだとか権力者を糾弾することを超えて(もちろんそんな映画が好きだが)映画として純粋に美しかった
中将たちの持つものではなく、自分もこんな価値観のもとで生きたいと思わせてくれる

ミッドクレジットシーン、エンディング後も映像があるので席や電源は切らずに