空海花

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話の空海花のレビュー・感想・評価

4.3
映画館3週間以上ぶり。
タイムラインはTENET祭りですね✨すぐ観たかったけれど初日は外しました💦
レビューは観てから読ませていただきます🙇
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オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ監督作品。
「最強のふたり」大好きなので楽しみでした。

これは思っていたより、ずっと重い。
フランスの自閉症ケア施設の現実を描いた実話。
パリの凱旋門から遠くない場所らしい。
ラジ・リ監督の「レ・ミゼラブル」を思い出す。
広告や「最強のふたり」から、厳しい現実の中でもユーモラスな雰囲気をやはり想像していたが。

ユーモアは確かにある。
台詞で楽しめるのは流石。
フランス映画らしく、ドキュメンタリーのような説明臭さはない。
登場人物をとても平等な視点で描いている。
だからこそリアリティに富んでおり、
作りはいわゆるお涙頂戴感からは遠く
だからこそものすごく感動させられる。
もうあっちこっちで涙が溢れた。


以下感想は少しネタバレかも🙇


ヴァンサン・カッセル演じるブリュノと
レダ・カデブ演じるマリク。
自閉症児のデイケア施設〈正義の声〉と
社会からドロップアウトした若者たちの就業支援を行う〈寄港〉
それぞれの代表であり友人でもあり
互いの組織で共に若者のケアを行っているような感じ。
この2人の関係もある意味「最強」のように思える。

思える、というより思ってはいるが
施設の在り方に関してはある意味互いに補い合える関係で理想的だが、ギリギリ保っているところがある。
“なんとかしている”だけというか
この2人(そして周囲の人含め)だから何とかできてきたというか。

この〈正義の声〉がどんなに重症の自閉症児も受け容れるので常に子供たちでいっぱい。
スタッフも足りない。経営も赤字。
ちなみに子供たちと言っても就業年くらいまでの様々な年代。症状も様々。
〈寄港〉の若者も遅刻魔だったり、長い文章を考えられなかったり…から学び始め、〈正義の声〉で働くけれども資格はない。
いつ何が起こるかわからない問題を常にはらんでいる。

また、ブリュノはユダヤ人で、マリクはムスリム。
2人の厚い信頼関係に人種の壁なんてつまらないものはあっさり取り払われているものの、一つ問題が。
独身のブリュノにマリクがイスラム式お見合いをセッティングすること(笑)
「シドゥク」と呼ぶらしい。
ブリュノはスマートな会話術はあるのだけれども、何せ忙しすぎてうまくいかない。
オランジーナのCMを思い出す🍹(笑)
でも台詞が良すぎてニンマリしてしまう。

しかしシリアスな比重は大きく
ジョセフのお母さんの言葉も胸が締めつけられた。
あらすじにあるヴァランタンのエピソードには緊張感に包まれたし
その介助にあたる新人君とマリクのやり取りも沁みた。
そして何と言っても啖呵をきるようなブリュノの口上だ。
単なる説明ではない、生々しい良き言葉を堪能し、噛みしめた。

ヴァンサン・カッセルはインタビューで
愛と献身を描いた映画だと語っている。

映画ファンには邦題長すぎてあれなんだが、重い話だし、フランス映画よくわからないって言われるし、日本でなかなかヒットしないし、こういうタイトル付けると付けないで動員数が実は変わるのか?そういうのもあるのかな…とか思ってみたり。

でもこれはとにかく素晴らしい作品。
普段こういうの観ない人にも、もういっそ騙されるのならば騙されて?観てほしいと思いました。

優しい世界であれ。


2020劇場鑑賞No.85/total121


ネタバレコメントあり
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