「あくまでも、万引きは犯罪です」
吉田恵輔監督最新作。スーパーで万引きしたある親の娘が逃げて、スーパーの店長に追いかけられた時に事故り死んでしまったという導入。
これは重い。流石の吉田恵輔作品と言いますか、視聴者の心をエグるのが本当に上手い。これ一見加害者や被害者でその時の感情によってコイツが悪い、みたいな感じになるけど、悪いのは万引きをした娘ただ一人なだけなんだよな。そこを忘れそうになって魅入ってしまったよ。
自分としてはそれでもやっぱり添田の行き過ぎた行動にはちょっと嫌悪感を感じた。元々娘に対してもあまり分かろうとしない放置プレイ気味だったとこもあってか、娘の死を盾にして他人に怒りをぶつけてるようにしか見えなかった。でもその添田に最後泣かされたのはやっぱり話作りが上手いというか。あと添田と一緒に仕事していた藤原季節演じる野木のポジションが良かった。一度は添田の元を離れても添田のトコでしか仕事できないと思い戻る。添田にとって他人の中では唯一の拠り所になっているのが良い。ちょうどいい距離感。
一方のスーパーの店長をやっている青柳も、たまたま見つけたのが添田の娘であって、普段からそんなに万引きに対して力入れて無かったような、むしろ父親の代からのプレッシャーに苦しんでた様すら見える。寺島しのぶの行き過ぎた善意行動が青柳と同じくだいぶウザかった。正義も行き過ぎると悪になるというか、余計なお節介というか。ボランティアで他人にきつく当たってるのとか見てられないと思ったよ。
ニュースなどで煽る様がかなり胸糞。万引きは犯罪なんだから仕方ないトコあるのにやり方がどうとか意味分からん。青柳は方法はどうかはともかく万引きを捕まえるコトに関しては何も間違っちゃいないわけで、自業自得って紙が添田の車に貼られてたけど、正直不謹慎だが自分もそう思った。
ちょっと勿体なかったのは、車で轢いた加害者、1人は添田に謝罪したりとか場面あって良いんだがもう1人トラックで轢いた方は警察の取り調べがちょっとあっただけで終わったのがなんとも。もうちょっと掘り下げあっても良かったような気が。仕方ないとは言えトドメ刺したのは間違いなくこのトラック野郎なのにさ。
最後に添田と青柳、ほんのちょっとの希望を持たすのも上手い。と、色々と語りたいコトがあるぐらい秀逸なドラマだった。役者たちも熱演凄まじく、いやあ凄い作品だった。傑作です。
