“空っぽの世界に、光はあるか”
一体、誰に責任があるのか?
冒頭は、そんなテーマの作品かと思いながら観ていましたが、それだけではない重厚な作品でした。
この作品は“答え”を描いていない。
いや“答え”なんてない物語だろう。
人間の言動なんて白か黒かでわりきれるものじゃない。
「正しさ」を振りかざしたところで真実なんて見えてこないのだ。
主人公、添田充は真実を知る事で心に出来た「空白」を埋めようとする。
しかし、ある出来事を契機に向き合わなければいけないのは、真実ではなく、いなくなってしまった娘の心、そして、自分の心の有り様である事に気づく。
その気づきは他者に対して不寛容だった自分を変えるための行為につながっていく。
だからといって何も解決していないし、答えが出る訳でもない。
けれどラストで少し救われた気になる。
それは、添田が他者を赦し自分を赦すきっかけみたいなものを明示してくれるから。
この物語が終わった後も登場人物たちは「空白」を埋める作業を続けるだろう。
そう思うと何とも切ない物語でした。