Jun潤

青くて痛くて脆いのJun潤のネタバレレビュー・内容・結末

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2020.08.29

原作者・住野よる先生の「君の膵臓を食べたい」が良かったので今作も鑑賞です。

人に近付きすぎないがモットーの大学生・楓は講義中に戦争をなくすことは可能かと質問する学生・秋吉と出会う。
それから二人で行動するようになった楓と秋吉は、入るサークルを決めることができず、なりたい自分になることを目的とした「モアイ」というサークルを立ち上げる。
浜辺のゴミ拾いやフリースクールでの活動など、地味な活動が続くが、秋吉と行動を共にする楓は次第に笑顔が多くなっていく。
そんな二人の活動に魅せられた院生の脇坂が活動に加わったことで、次第に活動の規模や参加する人数が多くなり、楓と秋吉の間に距離ができていく。
そして3年の時が流れ、内定が出た楓は「やるぞー」と口にする。
居酒屋で友人の董介と飲んでいる楓の視線の先にはモアイのTシャツを着た学生集団と社会人が酒を交わす様子があった。
楓は董介に、モアイは自分と死んだ友人が立ち上げたサークルだと語り、卒業する前にモアイをぶっ潰すという提案をする。
行動を開始した楓と董介はモアイの交流会やBBQパーティーに参加し、炎上しそうなネタを探す。
モアイの幹事長を務めるテンや楓のバイト先の後輩である川島、董介が想いを寄せる後輩・ポンちゃんを欺きながらネタを探す楓は、BBQパーティーに現れたモアイの現代表・秋吉と再会しそうになりその場から逃亡する。
そしてついにモアイが学生の個人情報を企業に横流ししている証拠を掴みネットにネタを投下、モアイは炎上し、解散に追い込まれる。
秋吉と対面した楓は思いの丈を全てぶちまける。
そして大学卒業後、川島からの連絡を受けた楓は解散してもなりたい自分になる活動をするべく再度立ち上がったモアイを目の当たりにし、秋吉との再会を果たす。

青春は「青くて痛くて脆い」。
楓がなりたい自分になるチャンスを逃す場面とフリースクールに通う瑞希とのリンク、董介から見ても過激とも取れる行動、たやすく崩れ去るモアイ、そして吉沢亮の移り変わる表情の演技からそれが見て取れました。
「キミスイ」は青春映画に見せかけた命の物語という感じでしたが、今作はサスペンスに見せかけた青春映画という感じです。

物語の盛り上がり的には秋吉は死んでいなかったことが判明する場面がピークでしたが、序盤のモアイの内情を探るサスペンス調の雰囲気と、後半の楓の、どこにでもいるような大学生らしい平凡な異常性が浮き彫りになっていく雰囲気の転換点となっていた印象です。
そこの雰囲気的には「何者」に似ていますね。

特に楓と秋吉が対面するシーンでは、脇坂と秋吉が付き合い始めたことで自分の居場所がなくなったような気になり、自ら勝手に立ち去ったことを秋吉のせいにして、
当初の活動内容からサークルの意義が変化したことが気に食わなかったというだけで解散に追い込んだりと、
やっていることやその過程、そしてその行動原理も、どこか場当たり的で独善的で、なりたい自分になろうとせず、なりたい自分になろうとしている人たちを遠目から眺めて批判するだけという、
大学生や大学生を経験した人にとっては共感性の溢れるものになっていたと思います。

良い意味でも悪い意味でも吉沢亮だけが目立っていたなという印象と、光石研のインパクトが強かったです。
Jun潤

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