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護られなかった者たちへのSSDDのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.6
◼︎概要
廃屋に拘束され放置されたことにより、脱水、餓死させられるという猟奇的な殺害手法での事件が発生。変わり者の刑事は独特な視点で事件を追うが、一人の容疑者の悲痛な過去が徐々に明かされていく…。

◼︎感想(ネタバレなし)
悲痛で悲壮感のあるサスペンスで内容は素晴らしいがエンドロールのサザンで興醒めして評価が下がってしまった。なければ4.0つけてただろう…。
せっかくのカタルシスも台無しになる選曲に頭が来る…サザンは好きではあるが、まったく本作とイメージが合わない…。

…と怒りの感想から入るが、始まった途端にわかる本作の重さ、エフェクトは緑がかった暗い映像で、くたびれた顔の人々が映し出される。

ただの猟奇殺人事件ものではなく日本の社会的問題点にフォーカスし、"護られなかった者"というのを伏線とした悲しい物語は、観る前に想定する内容と乖離があり観終わった後にはまったく違う構想が素晴らしかった。

最近の邦画の重いサスペンスものは素晴らしい、VFXなどの派手なエンタメは得手としないのであれば不要な分野で伸ばして欲しい。









◼︎感想(ネタバレあり)
・震災と人災
震災による被害という避けられないものと、貧困というものを救うセーフティーネットの生活保護に焦点を置き、二つの重なりで疲弊する人々を描く。
職員達にも悪人ではなく精一杯なんとか現状をやっていたといういたたまれない内容に胸が痛む。
ただ友の死を目の前にした人間にかける言葉として最低なセリフを吐いた二人は確実なる死が描かれたのは必然。

そして殺害方法も餓死という、同じ苦しみを与える手法が残忍だが、悔いる時間を与えながら等しい死を与えている。
"誰かに看取られて死ぬなんて難しいんです"という言葉を返すようにひっそりと廃屋で死なすという皮肉も効いていた。

・皮肉な運命
容疑者は刑事の子供を救えなかった→同じ黄色の上着を着ていた子供を護る決意をした→その子供が大人になり殺人→刑事がそれを捜査→刑事は子供の死を見届けたのが容疑者と知る

最後に明かされる、おそらく自分の子供の死に際を見ていたのが容疑者だったというオチはなかなか皮肉だった。

"声をあげてくれて、助けようとしてくれてありがとう"と言っていたが救えなかった代償に殺人が生まれたという皮肉が本作を最後に複雑な感情にさせた。

なんというか感動的な終わり方という捉え方よりぞっとする内容で、私には悪趣味に写り逆に満足度は高まった。
うーん…捻くれた感想になってしまったが、私は満足できたなぁ。
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