むっしゅたいやき

トスカーナの小さな修道院のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

トスカーナの小さな修道院(1988年製作の映画)
3.8
暮らしと云う名の「円環」。
オタール・イオセリアーニ。
イタリア、トスカーナの人々の暮らしを描いた、明確なストーリーラインも作為的な映像も無いドキュメンタリー作品である。

本作の原題は『Un petit monastere en Toscane』であり、直訳すると『トスカーナの小さな修道院』となる。
その名の通り、修道院に住まう五人の修道士達と、周縁部に住まう農村の人々の暮らしを画き出した作品であるが、イオセリアーニは敢えて意図的に同列、順不同に扱っており、両者の間に描写の軽重は見当たらない。
それは恰も、「祈りも生活も、洗礼も狩猟も、聖餐も精肉も、各々対立する物では無く、全てを含めて暮らしと為す」と主張するかの様ですらある。

本作は冒頭に一文が載る他、一切字幕も載らない映画的には寡黙な作品である。
が、彼等の暮らし振りからは相互間の賑やかな会話が見て取れる。
グレインフィルタを通した長回しの力も有ろうが、異なるシークエンスでも共通の劇伴を其の儘使用している点にも留意されたい。

過不足の無い、トスカーナの人々の暮らし。
日々あくせく働き小さな己の欲望を満たす、そんな私には堪らなく魅力的に見える作品である。
むっしゅたいやき

むっしゅたいやき