IwaoKatsumura

ザ・ファイブ・ブラッズのIwaoKatsumuraのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
5.0
202006某日:ネットフリックスオリジナル。一人で視聴。スパイクリー監督作品。ハードな映画でした。

2018年の前作のブラッククランズマンでは見事にアカデミー賞脚色賞を受賞したスパイクリーですが、変わらずに現代的なブラックライブスマターに直結する作風を続けていてタフだと思う。

ベトナム戦争中にCIAの隠しゴールドを見つけて埋めた4人の黒人帰還兵が現代に戦友の骨探しと合わせてそのゴールドを発掘に行くがその金塊を悪い奴らに狙われて泥沼の戦闘状態に落ち込んでいくという話。

かなり複雑な映画的手法を盛り込んでいて、語るところの多い映画でした。

まずは、やはり冒頭にベトナムで再開したベトナム帰還兵の老人4人がホーチミンのクラブに行くと、後ろにでっかく「アポカリプスナウ!」って言う横断幕がかかってる。つまり「地獄の黙示録」ですね。そこから回想シーンに入るとヘリでベトコンと戦うシーンになって、そこは完全にコッポラ的と言うか、ベトナム戦争映画の撮り方になってる。

この辺りのコンバット演出はすごく教科書通りで一級の戦争映画に感じました。役者の演技も緊迫感があって良いです。

その前後でベトナム戦争のイメージが有名な写真や動画でカットバックされるんですが、そこは半端ないです。ベトナム戦争の時はアメリカはプロパガンダのために戦場にジャーナリストを送り込んで生の戦闘シーンを記録してたんですよね。

お茶の間で殺人とか人体損壊とか虐殺的な死体の山が映されてたというのだから衝撃です。しかし、これが引き金となりアメリカ国内では反戦の機運が高まったので、その後の湾岸戦争やイラク戦争などではアメリカは戦場での報道には制限をかけてるそうです。

とにかく、裸で手を開いて泣く女の子とか、道端でまさにこめかみに銃弾を受けている瞬間の写真とか、すげー写真がいっぱいありますよね。あんなのがスクリーンに映されるので、ショッキングです。あの、頭をぶち抜かれてる写真の動画があるみたいで、倒れた男のこめかみからビューって血がホースから飛び出るみたいに溢れてるとこも映ってて、本当に半端ないです。戦争反対。

とにかく映像が強い作品です。一種の寓話なのでご都合主義的な展開もありますが、そこは金塊とか気見つからないと話が進まないので、宝探しなんかはさらっとやって、そのあとの人間心理の崩れ方や一種のサルベーションなんかがうまく描かれていて泣けた。

ブラックライブスマターの話も非常にナウに取り込まれていて、まさしく、今が黙示録なんだ! というメッセージを感じた。

アーマゲドン イット ビーン エフェクト!

強い映画でした。怒りを感じたい方はぜひ。
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