ぬ

ヤクザと家族 The Familyのぬのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.8
『孤狼の血』や『すばらしき世界』がとても好きだったので、現代のヤクザ映画ということでこちらも観てみたのだけど..面白かった...!!!!!!!!!
バイオレンス部分が多い前半は『孤狼の血』、後半の現代の反社の扱いを描いた部分は『素晴らしき世界』を思わせる感じで、ドンパチしたバイオレンス部分とドラマの部分の切り替わりも時代ごとに変わるヤクザの扱いを引き立てていてよかった。暴力団排除条例の影響がすごい...
綾野剛が出ている作品て実はあんま観たことなかったけど、こういう控えめな演技が上手いな、てかみんな演技いいな〜磯村勇斗の顔の演技いいな〜

しいて言うなら、「現代のヤクザもの」って感じなわりに、由香と賢治のLOVEストーリーの部分と、金属バットで殴り込みはちょっと古臭くね〜??っていう…
古臭い「ヤクザと女」的なものを引きずってる感。
でも恋愛部分はなんかそうなるのもわかるというか…
賢治は今までまともな人間関係を形成できてこれなかったから、異性ともこういう始まり方や関わり方しか出来ない、というのを描くためのラブストーリーパートなんだったら納得なんだけど、これが何やかんやで素敵なラブストーリーかのように扱われてんなら疑問だなぁ。
(少なくともこの映画では) ヤクザってある意味chosen family的な存在だよな〜って思ったんだけど、ヤクザの組という家族たちとの信頼関係が薄れて行ったり、心の底にはやっぱりまだ残っている血縁関係としての家族というものへの憧れや執着から、由香のほうへ思い入れていたのかな。

これはやはり同じく元ヤクザの前科者の出所後の生活を描く『すばらしき世界』でも感じた部分なのですが…
細野が「ヤクザが人間扱いされ人権を与えられるまでに5年かかる」と言っていたけど、その5年が過ぎたあと法律的に人権を与えられたとて、世間からの「元反社」や「元反社と関わっていた人」に対する視線っていうのはそうそう簡単に変わるものではないよなって思った。
「あなたと関ってるの世間にバレると、こっちの身も危ないんで」って昔は仲良くしてた周りの人間もどんどんいなくなって、まともな仕事にもなかなか就けなくて、社会との接点が持てずに孤立していってしまう…ってことがあれば、じゃあやっぱ自分はカタギとして生きられないから反社の世界で生きていくしかないじゃんてなるの悲しいけど自然な流れだよなと思うよね。
元反社の人を二度と反社に戻らないように、って部分がごっそり抜けているよね。

この映画に出てくる親分たち世代の義理人情があったり仁義を通したりって文化がどんどん薄れて行った後のヤクザって、本当に単に暴力・詐欺組織ってだけな感じもするし、それと同時にいわゆるカタギの人間でも反社とやってること変わらんとか、なんなら反社よりひどいことやってるみたいなこともある訳で、ヤクザ組織としての家族という形態の崩壊が進むと、その境界線がすごく曖昧になって行っている気がした。(まぁだから”半グレ"なんだよね)
「悪事を働く集団」という意味では、別に暴力団や詐欺集団じゃなく、国の下で働いてる組織とかも変わらんやんってのあるしね...
ぬ