このレビューはネタバレを含みます
本作は台詞以上に映像が雄弁でワンカットでも見逃そうものなら話の本筋がわからなくなってしまう実に繊細な映画だ。その繊細さはまるで主人公のユーリ、あるいは壊されていくガガーリン団地を象徴しているようである。
本作一番の見どころはやはりS.O.Sのモールス信号なのではないだろうか。あの信号で助けを求めているのはユーリなのか、ガガーリン団地なのか、あるいはそこにある思い出たちなのか、、あのシークエンスをどのように解釈するかによって、本作を別の角度から見られるから面白い。
もちろん設定の独自性や面白さからすれば、話の広げ方に物足りなさを感じるという意見があるのも理解はできる。それでも演出にキューブリックやギャスパー・ノエの影響を感じさせながらも独自の世界観を作り上げたことは十分に評価されるべきだろう。個人的にこういう映画は結構好きだ。